2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J05498
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山口 亮介 Kyushu University, 法学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 近代法 / 司法 / 行政 / 三権 / 制度 / 法継受 |
Research Abstract |
本年度は第一に、明治4年の司法省成立に至るまでの江藤新平に関する諸制度案の展開の過程並びにこれと平行しつつ段階ごとに形成される彼の構想に直接・間接に影響を与えたと考えられる米蘭をはじめとした諸外国の法・制度に関わる諸典拠やそれを受容する当時の国内に於ける知識状況について関連諸史料を概観することを通じて、明治国家初期段階における「司法」の輪郭形成の一端を明らかにした。当時に於いて「司法」をめぐり裁判や諸官員の配置などによって提起された諸構想が観念枠組みの受容から具体的な制度の策定に至るまでその都度に諸々の典拠を道標としながら同時に既存の刑部省の制度への理解をも踏まえつつ形成されてゆく重層的な知識構造を有することについて、本研究は「司法」に関すると考えられるものとして当時それぞれに参照された情報につき、西欧諸国における文脈の推移やそれらのわが国への流入の態様、わが国の実態レベルに於ける情報の受容と取捨選択そしてそれら相互の比較検討を通じた検討の可能性を提示した。この点報告者は、特定の要素の有無や集合を以て直ちに「司法」が立ち上がるものであるとする立場に距離を置くものである。以上の成果を法制史学会研究大会(2009年4月・九州大学)にて報告し、これを基に『法制史研究』59号に論文「明治初期における「司法」の形成に関する一考察:江藤新平の司法台構想とその典拠にみる議論の諸契機」として発表した。これを踏まえ、第二の課題として現在、司法省設置から8年の大審院設置前後の期間に主に司法省において諸機構の整備と平行してなされた当時における「司法」にかかわる観念の獲得の態様を、御雇い外国人ブスケの講述などを以てヨリ具体的且つ詳細に摂取が可能となった仏国をはじめとする諸外国の法・制度の側面と、頻繁な制度改革による権限増減の実態に直面した制度当局者の側面の双方からの検討・考察を進めている。
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Research Products
(1 results)