2009 Fiscal Year Annual Research Report
アリールジカルボニルシクロペンタジエニル鉄の効率的合成法及びその変換反応の開発
Project/Area Number |
09J05552
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安田 茂雄 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | アリール鉄 / アリール金属 / 光反応 / 有機リチウム反応剤 / アリールカルボニルカチオン / ケトン / 銅 / アリールスズ反応剤 |
Research Abstract |
アリールジカルボニルシクロペンタジエニル鉄(以下、アリール鉄錯体とする。)は、安定で取り扱いが容易である上に、特異的な反応性を示す興味深い化合物であることが知られている。よってその反応性に関する研究は、既存のアリール金属反応剤では実現することができない、有用な有機合成反応の開発につながると考えられる。 そこで申請者は本年度、アリール鉄錯体の反応性に関する研究を行った。具体的には光反応によるアリール鉄錯体のハロゲン化アリールによるアリール化反応及びハロゲン化アルキルによるアルキル化反応を計画した。これらの反応を実現するためには、鉄を電子豊富にして、鉄へのハロゲン化アリール及びハロゲン化アルキルの酸化的付加を進行しやすくすることが必須であると考えられる。鉄を電子豊富にするために、鉄の還元及び鉄上の配位子交換などの検討を行った。しかし、目的の反応を実現することはできなかった。 当初計画した反応に加えて、アリール鉄錯体の反応性に関して様々な検討を行った。その結果、アリール鉄錯体と有機リチウム反応剤の反応において、アリール鉄錯体がアリールカルボニルカチオン等価体としてはたらき、対応するケトンを与えることが分かった。この成果は、アリール鉄錯体の有機金属反応剤に対する反応性に関して新たな知見が得られた点で注目に値する。 さらに、アリール鉄錯体の新しい合成法の開発を目指して種々の検討を行った結果、化学量論量のトリフルオロメタンスルホン酸銅(I)を添加することにより、ジカルボニルシクロペンタジエニルヨード鉄とアリールスズ反応剤の金属交換反応が円滑に進行し、対応するアリール鉄錯体が高い収率で得られることが分かった。この方法により、これまでの合成法では合成することができなかった、ケトン部位及びアルデヒド部位を有するアリール鉄錯体を合成することが可能である。
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