2011 Fiscal Year Annual Research Report
在外日本企業における最適現地化レベルの選択に関する研究
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09J05556
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡邉 万里子 慶應義塾大学, 経営管理研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日系多国籍企業 / 現地化 / 組織アイデンティティ / 人材の獲得と定着 / 財務パフォーマンス |
Research Abstract |
1.研究の目的とその意義 本研究は、日系多国籍企業(日系MNE)による経営現地化の遅れについて(Kopp,1994;吉原,1996;白木,2006)、現時点での現状とパフォーマンスとの関係を検討し、日系MNEにとっての適切な現地化の程度を探るものである。本研究では、在外拠点のパフォーマンスを人的資源の獲得・定着とそのアウトカムとしての財務的パフォーマンスの2つによって多面的に測定した。結果(1)日系 MNEの現地化レベルは進展させる余地がある、(2)経営システムはグローバルに標準化しながらも、拠点の自律性や現地の文化慣習への適応といった組織面での現地化が重要である、(3)ローカルスタッフが所属拠点や所属企業に対して組織的なアイデンティティを持つことが重要であることが明らかになった。また、これらの要因は人的資源の獲得・定着と財務的パフォ「マンスに対して異なる効果を持つことも明らかになった。本研究の結果は、日系MNEに対して注意深い現地化プロセスの必要性、経営の現地化をパフォーマンスにつなげていく組織的仕組みの必要性を提示している。 2.研究の具体的な内容 Chakravarthy and Permutter(1985)、渡邉(1997)のモデルに基づき、現地化のレベルを定性的な特徴によって定義した。主には、(1)現地拠点のローカル人員数・人員構成、(3)現地拠点への自律性、(4)現地拠点の評価・報酬制度、(5)他拠点・本社との情報フローを概念として用いた。また、これらの組織構造的な特徴に加えて、より組織内部の特徴を示す組織アイデンティティ(Albert and Whetten,1985)をもう1つの重要な視点とし、(6)組織の独自性の認識、(7)他組織との差異の認識、(8)組織内の同質性の認識を概念として用いた。分析手法として、日系MNEの在外拠点に対して行った質問紙調査データ(84社)を基にして統計的分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に基づいた調査に加えて、さらに、より詳細な事例の調査として、日系 MNEの在外拠点(在米拠点4拠点:電気機器2社、製薬1社、金融1社)への聞き取り調査を行った。そこでは、業種や拠点に与えられた役割の進化、活動年数によって、異なる経営課題があることが浮き彫りになった。特に拠点内における経営課題の認識が高かったのが、製薬企業と金融企業の在外拠点であった。製薬企業の在外拠点は他拠点との連携、研究者というユニークな現地人的資源のマネジメント、現地国の当局との関係性構築により力を入れていく必要性を実感していた。また、金融企業の在外拠点(NY)は、金融の最先端クラスター(ロンドン、香港)に属している他拠点との連携や商品開発の必要性、最先端のナレッジを本社にフィードバックしていく必要性を実感していた。この事例調査から、単純な統計的分析だけでなく、より詳細な事例の体系的比較研究が必要であることを認識した。
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Strategy for Future Research Activity |
追加調査でも明らかになったように、拠点の現地化にはライフタイムや役割の変化、業種によって異なる経営課題あり、単純なモデル化は注意深く検討するべきである。この視点に関しては、稲村(2007)、大木(2010)でも指摘されており、今後は長期的な視点から定量・定性的複数データを用いた多面的な分析が必要であると考える。
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Research Products
(3 results)