2009 Fiscal Year Annual Research Report
イネのジャスモン酸によるフェノール性化合物生産誘導を介した防御応答機構の解明
Project/Area Number |
09J05573
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 崇史 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | イネ / ジャスモン酸 / 防御応答 / ファイトアレキシン / フェノール性化合物 |
Research Abstract |
申請者らは昨年度までに、エリシター処理により誘導されるフラボノイド型ファイトアレキシン、サクラネチンの蓄積がイネのジャスモン酸(JA)生合成変異株cpm2において顕著に低下すること、培養細胞を用いたマイクロアレイ解析からcpm2ではフェニルプロパノイド生合成系遺伝子の発現が抑制されることを示してきた。そこで本研究ではcpm2を用い菌接種実験を行うことでイネの病害抵抗性発現におけるJAによるフェノール性化合物生産誘導を介した病害抵抗性発現機構の解明を行い、JAの生理的意義を明らかにすることを目的とした。昨年度はcpm2のいもち病菌接種実験を行った。いもち病菌胞子をイネ葉鞘内に注入し、接種2日後の菌糸侵入を観察したところ、cpm2では野生型に比べ多細胞にわたり侵入している菌の割合が高かった。またこの形質は、cpm2に対し接種前日から水耕液に100mMのJAを添加し処理することで、野生型と同レベルにまで抑制された。以上の結果からJAが菌感染初期の抵抗性に関与していることが強く示唆された。これはイネにおいてJAが病害抵抗性発現に重要であることを直接的に示す初めての例である。また菌接種時のファイトアレキシン生産について検討したところ、サクラネチンに加えジテルペン型ファイトアレキシンについても蓄積・生合成酵素の発現が共に低下していた。これは菌感染時のファイトアレキシン誘導にJAが重要な役割を担っていることを示唆している。またリグニン染色実験も行ったが、菌侵入部位と染色部位との相関、また野生型株とcpm2との差異が明確には観察されなかった。今後はcpm2に加え、JAシグナルの活性本体であるとされるJA-Ileの生合成変異体jar1も用い同様の解析を行い、JA情報伝達の関与をより詳細に解析すると共に、マイクロアレイによりJA誘導的なフェノール性化合物生合成関連遺伝子の探索を行っていく。
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Research Products
(6 results)