2010 Fiscal Year Annual Research Report
光学活性α-ヘテロ置換アルキルボランの立体特異的反応の開発と不斉合成への利用
Project/Area Number |
09J05607
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
粟野 知嗣 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有機ホウ素化合物 / 鈴木-宮浦カップリング / パラジウム / 遷移金属触媒 / 立体保持 / 立体反転 / 立体化学制御 / 立体相補的合成 |
Research Abstract |
α炭素にヘテロ置換基を有する光学活性アルキルボランを用いた触媒的炭素-炭素結合形成反応を開発し、第2級アルコールおよびアミンの不斉合成法の確立と効率的ライブラリー構築の実現を目的として研究に取り組んだ。まず、α炭素にアミド基が置換した光学活性ベンジルボロン酸エステルを用いる立体特異的鈴木-宮浦カップリングについて、詳細な検討を行った。その結果、炭素-炭素結合形成における立体化学情報の保持には、窒素原子に置換した有機基の立体的要因が重要であることを見出し、かさ高いピバロイル基を置換させることにより、炭素-炭素結合形成が高いエナンチオ特異性で進行することを明らかにした。また、この炭素-炭素結合形成反応が鈴木-宮浦カップリングでは初めて立体反転を伴って進行することを明らかにした。本知見は遷移金属触媒反応の研究分野に強い波及効果を与えるものである。 次に精密有機合成への応用を指向し、窒素上に脱保護が容易なアセチル基を有するホウ素反応剤を用いて反応条件の再検討を行った。その結果、酸性化合物を共存させ反応を行うことにより、出発物の立体化学情報が生成物により効率よく反映されることが明らかになり、特にフェノールを共存させることで、立体反転を伴う鈴木-宮浦カップリングが高エナンチオ特異的に進行することを見出した。さらに酸性添加剤の検討を行ったところ、アルコキシジルコニウムを用いることにより反応の立体化学が逆転し、カップリング反応が立体保持で進行することを見出した。酸性添加剤の効果による相補的な立体化学制御により、エナンチオマーの高度作り分けが達成できたことから、本研究の成果は不斉合成に有用な新方法論を確立した点において有益であると考えられる。
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Research Products
(4 results)