2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J05681
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
根本 雅也 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本 / 原爆 / 文化人類学 / 記憶 / 戦争 |
Research Abstract |
広島に投下された原爆とその被害は、その規模の大きさと特殊性ゆえに世界中で知られてきた。日本政府、広島市行政、社会運動、マスコミなどの諸組織は折に触れ原爆投下に言及し、様々な政策や活動を展開してきたものの、これまで原爆に関わる社会科学的研究の多くはこれらの諸組織が持つ影響力についてあまり考慮に入れてこなかった。本研究の目的は、社会の諸組織によって提示される原爆に関する知識や言説あるいは表象が広島の原爆被爆者とその記憶にいかに介在し作用するか(してきたのか)を微細に調査・検証し、記憶と知識等の動的な関係を探ることを通じて、「記憶」のあり方を再考していくことにある。これを達成するため、本研究は、具体的に1.原爆に関する科学的知識の伝達と影響、2.政治/社会運動における「被爆者」の参与と「被爆者」概念の争い、3.行政における「被爆者」への対応、4.マスメディアにおける原爆被害の表象とその変遷、5.証言活動の制度化の進展と被爆者意識の変化という五点に注目し、被爆者の記憶と諸組織によって形成された知識や表象の関係を多角的に探っている。以上について、平成21年度は一部を整理しつつ、現地調査を行った。 1.原爆(研に放射線)に関する医学的知見を歴史的に辿ることで、現在においても身体的影響について対立的立場や分かっていない事柄があることが明らかとなった。 2.及び3.上記1で見たような対立的な立場が特に現れたのが「被爆者」のカテゴリーをめぐる裁判であり、本年度はこれら裁判記録の整理や原告への聞き取りを行った。 4.原爆被害者の取材が活発になった1950年代半ばから後半のメディアの報道のあり方とその被爆者への影響を検討し、その一部を整理した。 5.組織的な証言活動がいかにして形成されたのかを歴史的に辿るとともに、そのなかで被爆者が「証言者」として自らを形づくる過程について学会等で発表を行った。
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Research Products
(1 results)