2011 Fiscal Year Annual Research Report
不安定なコネクティビティの移動通信環境におけるトランスポート技術に関する研究
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09J05729
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
本多 倫夫 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インターネット / 中間ボックス / TCP / プロトコル / 計測 |
Research Abstract |
現在のインターネットには最適化やセキュリティの向上のために多くの中間ボックスが設置されており、一方でこれらは近年提案されたMultipath TCPやTcpCryptを含むTCPの拡張に影響を与えることが大きな問題となっている。中間ボックスの挙動により、TCP拡張の設計によってはそのTCP拡張が動作しないだけでなく、最悪の場合エンドホストが気づかないまま不適切な通信が継続される可能性がある。その故、TCPを安全かつ実用的に拡張するためには中間ボックスの動作を理解することが重要である。 一方、通信事業者や通信機器ベンダ、標準化コミュニティのどれにおいても、中間ボックスめ具体的な動作は把握できていない。本研究は世界で初めてインターネット上における中間ボックスの動作を詳細に明らかにした研究である。具体的には、世界中の研究者らに協力してもらい、様々なネットワークにおける中間ボックスの動作を調査した。その結果、中間ボックスがTCP拡張にどう影響を与えるかを明らかにし、今後TCPを拡張する際の設計原則を確立した。 本研究の成果は、インターネットの計測に関して最も著名な会議である、ACM Internet Measurement Conferenceにて発表した。同会議は2001年から毎年開催され、フルペーパーが採録されたのは、日本人として初である。本研究は、現在のインターネットトラフィックの大部分を占めるTCPの将来の拡張性を明らかにした成果が評価され、インターネット技術の標準化組織であるInternet Engineering Task Force(IETF)の研究部門である、Internet Research Task Force(IRTF)よりApplied Networking Research Prizeを受賞した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的では、2011年度は中間ボックスの調査の研究および新たなトランスポート層アーキテクチャの設計を別途行う予定だったが、中間ボックスの調査においてより深い考察を行うことにより、TCPの拡張を中心とした今後のインターネットのアーキテクチャを示した。その結果、トップレベルの国際会議からの採録の他、標準化コミュニティからも表彰されるなどの結果を残したため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も中間ボックスの調査の研究を継続する他、新たなトランスホート層アーキテクチャを設計、実装するため、同研究で利用したトラフィック生成ツールの拡張、およびユーザ空間におけるプロトコルスタックの設計、実装をする。現在のインターネットは中間ボックスの存在だけでなく、エンドシステムの実装にも大きな原因があり、限られたプロトコルしか存在できない状況になっている。同じことが将来起こらないようなプロトコルスタックの設計、実装を行うことにより、インターネットの発展可能性を高める。
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Research Products
(4 results)