2011 Fiscal Year Annual Research Report
東シベリア窒素ミッシングリンクの解明―植生と微生物叢の化学交信システムの解析―
Project/Area Number |
09J05778
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 新太郎 北海道大学, 大学院・農学院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 窒素固定 / 土壌微生物 / 北方林 / 東シベリア / アセチレン還元法 / スカンジナビア / ジェランガムソフトゲル |
Research Abstract |
これまでに、ジェランガムソフトゲル培養法によって東シベリア・タイガ林の林床土壌微生物群集が窒素個定能をもつこと、有機物層や比較的浅い土壌よりもやや深い30cm深度土壌の微生物群集が高い窒素固定能を持つ可能性が高いことを明らかにしていた。本年度は培養後の培地から抽出したDNAを16S rRNA遺伝子および窒素固定酵素の一部をコードするnifH遺伝子をターゲットとした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)で解析し、土壌深度ごとの菌相の比較を行った。その結果、30cm土壌の培養微生物群集から特徴的なバンドを検出し、その塩基配列は既に分離した窒素固定細菌Burkholderia xenovoransの配列と高い相同性を示した。 東シベリア・タイガ林の有機物層から分離したPseudomonas属細菌のうち数株はジェランガム平板上ではスウォーミングによるコロニー拡大を示すが、寒天平板上では小円上のコロニーを形成するにとどまる。ゲルマトリックスの違いで細菌の挙動が異なる原因物質の一つとして、寒天粉末中に含まれる5-hydroxymethylfuran-2-carboxylic acidおよびfuran-2-carboxylic acidを単離した。スウォーミング抑制活性の力価から、これらの物質が寒天平板培地とジェランガム平板培地で挙動が異なる原因の一部であり、極微量で細菌の挙動に影響を与えることを確認した。また、これらの化合物が、寒天平板培地に含まれる濃度で大腸菌のスウォーミングを抑制し、フィンランドの亜寒帯ツンドラ域土壌から分離された放線菌のコロニー形成に影響することを見出した。 スウェーデン北部・山岳地帯のAbisko周辺(68°18'N,19°10'E)では、標高600m付近でカンバ林から亜寒帯ツンドラ域に遷移する。この森林限界付近では地表を覆う植生が2種類あり、ツツジ科植物などの低木が優占する植生はheath、草本植物が優占する植生はmeadowと呼ばれている。森林限界付近のカンバ林内と亜寒帯ツンドラ域それぞれのheathとmeadowで土壌を採取し、ジェランガムソフトゲル培地で培養してアセチレン還元試験に供したところ、いずれもmeadow土壌は高いアセチレン還元を示し、heath土壌はほとんど活性が検出されなかった。このことから、Abisko周辺の森林限界付近では、heathに生育するツツジ科植物が土壌窒素固定を制御している可能性が示唆された。
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Research Products
(2 results)