2009 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀初頭アメリカ合衆国における社会保障思想の形成
Project/Area Number |
09J05791
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
牧田 義也 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | アメリカ史 / ニューヨーク / アジア / 社会保障制度 / 障害者福祉政策 |
Research Abstract |
本研究は、20世紀初頭のアメリカ合衆国における社会保障思想の形成過程とその社会的含意を、ニューヨーク市を事例として考察することを目的とする。20世紀初頭にアメリカ合衆国の多くの州・都市自治体の社会福祉プログラムは、従来の慈善思想に基づく貧困者の救済・矯正のための公的扶助(public assistance)と、元来は有用な労働者であった者たちに対する保障(security)としての社会保険(social insurance)とに分割・再編されていった。本研究はニューヨーク市の事例研究を通じて、身体的健常性(able-bodiedness)に基づく産業労働者としての適格性が社会保障の対象となるための条件としてこの時期に制度化されていったことを論証する。そして、この産業的適格性の原理によって保障の対象から除外された女性、児童、老齢者、障害者に注目し、行政による貧困者の分類・分配の試みの実態と、同時代の人種・ジェンダー観と結びついたその社会的含意を考察する。平成21年度は、研に合衆国の社会保障制度の形成期に際して国際的な社会政策上の思想交流が与えた影響に注目した研究を進めた。これは当時ニューヨーク市を中心に活動した社会改良家・制度策定者の多くが、アジア及びヨーロッパで活動ないし調査を行った前歴をもっていたという単純ではあるが研究者の言語的な制約からこれまで見落とされてきた点である。こうした観点から、アメリカ合衆国内での史料調査に加えて、ヨーロッパ・アジア各地で多くの国際会議報告を行い、各国の専門研究者と積極的な交流をもつとともに、研究成果の国際的発信に努めた。
|
Research Products
(7 results)