2009 Fiscal Year Annual Research Report
中心極限定理の一般化と写像の集中現象の応用について
Project/Area Number |
09J05792
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
船野 敬 Kumamoto University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 写像の集中現象 / 大数の法則 / CAT(0)空間 |
Research Abstract |
写像の集中現象の応用について考察をした。CAT(0)空間を値域とした確率過程の収束について考察を進めた。具体的には樹木とよばれる1次元CAT(0)空間やHadamard多様体を値域とした独立同分布確率変数列に対する大数の法則について考察した。このような距離空間を値域とした場合の確率過程の収束を論じる上での困難な点は、空間の非線形性にある。またその空間に値をとる確率変数列の期待値や、和の平均値の定義などにも様々な流儀があり、空間の非線形性ゆえにそれらの流儀は全て異なる。私は、期待値をその分布の重心(これは標準的な定義と思われる)としK.-T.Sturm氏により2003年に導入された帰納的平均値と呼ばれる和の平均値と定義した場合に考察を進めた。Sturm氏の結果によると上述の定義で値域が一般のCAT(0)空間の場合にいつでも大数の弱法則、強法則が成立する。しかし、Sturm氏は大数の弱法則の収束の速さについては議論を進めていなかった。私は値域を樹木やHadamard多様体に限定することにより大数の弱法則の収束の速さについて考察を進めた。樹木やHadamard多様体に限定したのは、一般のCAT(0)空間の場合であると分布の重心(期待値)の挙動がHilbert空間とどの位異なるのかが制限されないため議論が困難となるからである。樹木やHadamard多様体の場合であると完全に分布の重心の簡単な特徴づけを行うことができるので昨年度に樹木やHadamard多様体に値をもつ1-Lipschitz写像の集中現象を量的に研究した。その結果と直積測度距離空間の測度集中の結果を用いて確率変数列の帰納的平均値がその重心にGauss型集中を起こすことを明らかにした。さらに確率変数列の帰納的平均値の重心ともともとの分布の重心との距離の差を評価することにより証明を完成させた。また私の上述の証明の手法により、Sturm氏によって得られていたある不等式が他の平均値の定義の場合でも同様に得ることができれば、同様に大数の弱法則の収束の速さがGauss型になることもまで明らかになった。
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Research Products
(13 results)