2009 Fiscal Year Annual Research Report
西インド仏教石窟寺院の基礎的研究―美術史及び考古学を軸とした学際的アプローチ―
Project/Area Number |
09J05868
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
豊山 亜希 Osaka University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 美術史 / 考古学 / インド共和国 / 仏教石窟寺院 / ヒンドゥー教石窟寺院 / データベース / コロニアリズム / 文化変容 |
Research Abstract |
本研究課題は、インド西部マハーラーシュトラ州に分布する仏教石窟寺院のうち、先行研究によって看過されてきた同州南半部の造営例を研究対象として、実地調査による最新の現状記録を行い、基礎資料を再整備することを主旨とするものである。 当該年度は、基礎資料の実際の作成に先立ち、先行研究および研究代表者のこれまでの成果と課題の検討・把握を重点的に実施した。とりわけ、当該分野の研究基盤として英領インドの地誌調査の影響に注目し、平成21年9月10日~22日の日程でイギリス・ロンドンにて、大英図書館およびヴィクトリア・アンド・アルバート美術館付属図書館を中心に、19世紀の踏査記録や考古学者・美術史学者の言説に係る文献調査を実施した。 それらの史資料から、現状の石窟研究の基礎資料において、何がいかなる理由で看過されているのかを実証的に把握した上で、平成22年3月8日~29日の日程でインドにおいて、研究上の文脈からそぎ落とされたこれらの石窟寺院群について実地調査を行った。具体的には、マハーラーシュトラ州南半部に所在するカラード石窟群を重点調査対象に選定し、GPSによる地理情報の把握、写真撮影、略測図の作成を主体とする基礎資料を作成した。さらに、比較検討のためインド南東部タミル・ナードゥ州のヒンドゥー教石窟寺院を併せて実地調査し、小規模石窟群の基礎資料を可能な限り整備した。 当該年度に実施した研究から、先行研究によって看過されてきたインド亜大陸内陸部の小規模石窟群の基礎資料整備が端緒についただけでなく、それらが東西沿岸部の造営例の差異をつなぐ歴史上・様式上の存在として意義付けられうる可能性を見出した。この展望は、仏教石窟寺院の衰退とヒンドゥー教石窟寺院の興隆とを結ぶ文化変容過程の一端を知る上でも、重要な示唆を提供しているように思われる。次年度以降は、その関係性の実証的解明を目指し、本研究課題のさらなる深化を図りたい。
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Research Products
(2 results)