2009 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝学的手法による新たなMAPキナーゼインヒビターのスクリーニングの確立・応用
Project/Area Number |
09J05902
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
高田 宏文 Kinki University, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | MAPキナーゼ / シグナル伝達経路 / 分裂酵母モデル生物 / スクリーニング / 分子遺伝学 / ゲノム創薬 / 抗がん薬 / MAPKインヒビター |
Research Abstract |
MAPキナーゼ(MAPK)シグナルは、細胞増殖に重要な役割を果たしているが、MAPKシグナルの異常な活性化は、発癌メカニズムにも深く関わる。そこで本研究では、高等生物に極めて近い細胞内シグナル伝達経路を有する分裂酵母モデル生物を用いて、MAPKシグナルの制御因子を明らかにすることを目的とした。 高等生物のATF2のホモログであるAtf1という転写因子は、細胞増殖に関与するPmk1 MAPKの下流因子として細胞増殖を制御するが(Takada et al,Mol.Biol.Cell 2007)、その標的となる遺伝子群は明らかになっていない。そこでPmk1-Atf1依存的に遺伝子発現が制御される遺伝子の同定を試みた。その結果、GPIアンカー細胞膜タンパク質をコードするecm33^+遺伝子を同定した。Ecm33の遺伝子発現には、Pmk1 MAPK依存的に制御されるAtf1およびMbx1という2つの転写因子が関与することを見出し、さらにAtf1およびMbx1の転写活性を測定できるレポーターシステムを構築することで、Pmk1 MAPKシグナルの活性をin vivoでreal-timeにモニタリングするシステムを確立した。また、生理機能が未だ明らかとなっていないEcm33は、細胞表面に局在し、細胞内Ca^<2+>濃度を負に制御することで、Pmkl MAPKシグナルに対して抑制的に機能するというネガティブフィードバック制御を明らかにした。これらの研究成果は、学術雑誌Molecular Biology of the Cellに筆頭著者として掲載された。 MAPKシグナルは転写を介して遺伝子発現を制御することが多く、今回の研究成果は生命現象の解明だけでなく創薬への応用という観点からも非常に重要である。また、今回確立したin vivo real-time MAPKシグナルモニタリングシステムは、MAPKシグナルを標的とした新たな抗癌薬の開発において、有用なツールとして役立てられることが期待される。
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Research Products
(6 results)