2011 Fiscal Year Annual Research Report
14-15世紀ルッカにおける司法の動態的研究―裁判記録の分析より―
Project/Area Number |
09J05907
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
中谷 惣 奈良女子大学, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 中世史 / イタリア / 都市史 / 司法 |
Research Abstract |
本年度は、1.中世後期の民事司法に関するこれまでの研究成果を国内外で発信するとともに、2.議会議事録や法令集などを史料として、14-15世紀における司法と政治との関係を考察した。 1.14世紀ルッカの民事司法に関する研究を学術雑誌や学会で発表した。国内では「司法実践がつくるコムーネ--14世紀ルッカの民事裁判から--」を『歴史学研究』において、国外では、"La giustizia civile a Lucca nella prima meta del XIV secolo"を、Archivio storico italiano誌において公表したほか、7月にはイギリス・リーズでの国際中世学会において、"The Use of Civil Courts in late Medieval Italy:Case Study of Lucca"の題目で口頭発表を行った。また、民事裁判記録簿を史料論的に検討した論考「14世紀ルッカの裁判記録簿の史料論的考察-作成・保存・利用-」を執筆し、『西洋史学』に掲載されることが決定している。 2.これまで裁判記録簿を中心に研究を進めてきたが、本年度は議会議事録や法令集にも検討対象を広げ、14世紀から15世紀の政治的な変遷の中での司法のあり方や、政治による司法への介入について考察した。その結果、14世紀後半以降の法学者の助言の影響力低下や、政治機関(公や議会)による公共善の名の下での都市法の一時中断などが確認されたが、それらは総じて、ローマ法や法学者の下に置かれていた司法の領域に、国家権力、特に政治権力が深く浸透していく動きを示していると考えられる。なお、研究の遂行にあたり、1月から2月にかけての約1カ月、イタリア・ルッカ国立文書館において史料調査・分析を行った。
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Research Products
(3 results)