2009 Fiscal Year Annual Research Report
寄生虫ミトコンドリアの特異的エネルギー転換機構に関する分子進化学的研究
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09J05920
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
増田 功 The University of Tokyo, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ミトコンドリアゲノム / 遺伝子発現系 / パーキンサス / フレームシフト / 渦鞭毛藻類 / 寄生虫 / 分子進化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、渦鞭毛藻類とアピコンプレックス門の特徴的なミトコンドリアゲノム(mtゲノム)およびその遺伝子発現系について進化学的知見を得ることである。分子系統解析から2群の中間的な位置に派生する貝類寄生虫Perkinsusを用い、P.marinusのミトコンドリア遺伝子(mt遺伝子)coxlのmRNA全長塩基配列を決定した(以下Pmcoxl)。これはPerkinsusでは初めてのmt遺伝子の報告である。Pmcoxlプローブを用いたサザンハイブリダイゼーションからは、およそ10kb以下の低分子領域にスメアシグナルが確認された。これは渦鞭毛藻類のmtゲノムに特徴的であることから、Perkinsusのmtゲノムも渦鞭毛藻類と同様に複数のDNA分子の集合体として存在していると考えられた。Pmcoxlは近縁生物の相同遺伝子と高い配列類似性を示し、渦鞭毛藻類・アピコンプレックス門のmt遺伝子と同様に5'・3'末端領域にそれぞれ標準的な開始コドン・終止コドンは見出されなかった。またPmcoxlのmRNA配列はDNA由来のPmcoxl配列と完全に一致し、本遺伝子の発現においてRNA編集は起こっていないと考えられた。そして塩基配列と予測アミノ酸配列の比較から、AGGとCCCコドンで1塩基のフレームシフトが起こっていることが示唆された。またこれらのコドンはそれぞれUAGGY・CCCCUAという保存モチーフを伴っていた。これらのモチーフは近縁種P.olseni、P.honshuensisのPmcoxl相同配列や、もう一つのP.marinusのmt遺伝子候補cobの部分配列にも保存されていた。これは原生生物のmt遺伝子では初めてのフレームシフトの報告である。さらに1遺伝子中に10回という頻度は既知のフレームシフトと比較して圧倒的に高いことから、特殊なシステムの存在が期待される。
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Research Products
(6 results)