2009 Fiscal Year Annual Research Report
ベルクソン哲学の通時的解釈を踏まえた『道徳と宗教の二源泉』研究
Project/Area Number |
09J05921
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笠木 丈 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フランス哲学 / ベルクソン / 『道徳と宗教の二源泉』 / 「開かれた社会」 / 共同性 / 個 / 国際研究者交流 / フランス |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、ベルクソン哲学の通時的解釈を通して、これまで十分な光が当てられてきたとは言い難い『道徳と宗教の二源泉』(以下、『二源泉』)を主要な対象として取り扱い、そこで語られる「開かれた社会」が備えている社会哲学的射程を明らかにすることである。 こうした目的を目指して行われた本年度の研究は、ベルクソン哲学における「個」という主題を軸にして展開された。というのも、『二源泉』におけるその特異な個のあり方こそが、諸々の主体によって構成される共同性と、主体の交換不可能な独自性とが同時に、しかも互いに強めあうようなかたちで成立するという、「開かれた社会」の内実を解明するための導きの糸となるように思われるからである。 このことを明らかにするべく、『創造的進化』における「意識」と対比しながら『二源泉』における「情動」について着目した研究が行われた。また、『二源泉』において重要性を担う人格概念の特殊性についてのアプローチも行われた。これらによって、個と共同性に関する『二源泉』社会論の概念の布置を、ある程度まで解明するに至った。以上の成果は日仏哲学会と宗教哲学会において発表されている。それに加えて、狭義の哲学研究から離れた『笑いの科学』という雑誌媒体においてベルクソンの社会哲学を発表し、他専攻の研究者の目に触れさせ、自身の研究を練成させることもまた試みられた。 このように本研究課題では、ベルクソン哲学における未開拓な社会哲学的ポテンシャルを展開させるうえで、一定の地点に到達しつつあるということができる。さらに、日本学術振興会による「優秀若手研究者海外派遣事業」によってトゥールーズ・ル・ミライユ大学のピエール・モンテベロ教授のもと、2010年3月30日よりフランスでの在外研究がすでに着手されている。こうした流れを継承する来年度の研究は、さらなる進展がなされる見通しである。
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Research Products
(3 results)