2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学における検閲、特に内務省の検閲と伏せ字・削除を用いた内閲の研究。
Project/Area Number |
09J05937
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
牧 義之 Nagoya University, 文学研究科, 特別研究員DC1
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Keywords | 日本近代文学 / 検閲 / 言論統制 / 出版研究 / メディア史 |
Research Abstract |
昨年度提出した修士論文の活字化を目指して、訂正、加筆、追加調査を行い、2章分を発表した。「削られた作品の受容と変遷-片岡鉄兵「綾里村快挙録」の伏字・活字削除を中心に-」(『JunCture超域的日本文化研究第1号』)と、「近代日本の言説における<伏字>の基礎的考察-その役割、形態について-」(『中京国文学』第29号)である。 また、昨年度から取り組んでいた共著書として、日本近代文学会東海支部編『<東海>を読む近代空間と文学』(風媒社)に論文を発表し、刊行した。 学会発表は「森田草平『輪廻』における検閲-伏字とページ差し替えをめぐって」(日本出版学会歴史部会)と韓国での第1回東アジア国際新進研究者学術交流会「帝国の出版メディア統制-『新刊弘報』の分析からみるその活動実態」の2本を行った。どちらも本研究の課題である出版、検閲に関することである。森田草平『輪廻』は、科研費によって複数の本文を入手・調査を行い、伏字表の存在を明らかにし、当時の社会情勢との関係も明らかにする研究を行うことができた。韓国で行った発表も、同じく科研費で購入した戦時期の近刊情報誌『新刊弘報』の分析から、戦前・戦中期の出版統制の一側面を実証的に明らかにした。これに関しては、本年度中に活字化して韓国側の研究所の論集で発表する予定である。 研究計画として挙げていた『改造』の内閲研究は、大正8年の創刊から、昭和2年まで行った。本年度はさらに進めて各大学図書館や国会図書館の蔵本との比較や、書き込み本の調査、また総合雑誌以外の検閲原本の検閲官の書き込みの調査を行い、検閲と内閲の実態をより明らかにする予定である。 総合雑誌以外の調査結果として、第1回芥川賞受賞の石川達三「蒼氓」が掲載された同人誌『星座』の検閲原本が2冊確認できたので、作品中の描写で検閲された箇所、単行本化にあたり訂正された箇所を確認し、論文として発表する予定である。
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