2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代文学における検閲、特に内務省の検閲と伏せ字・削除を用いた内閲の研究。
Project/Area Number |
09J05937
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
牧 義之 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 日本近代文学 / 検閲 / 言論統制 / 出版研究 / メディア史 |
Research Abstract |
戦前期の検閲に関する研究として、出版法制に変化が現れだした昭和5年に発禁処分を受けた図書について考察した「戦前の検閲と「改訂版」に関する一考察-昭和五年・発禁本『肉体の悪魔』と『武装せる市街』から-」(『中京国文学』第30号)を発表した。この中で、国立国会図書館所蔵の「特500」資料群について、従来確認されなかった検閲原本が含まれていることを論じた。この調査は、23年度も引き続き行い、資料群の実態把握に努める。 また、特殊な刊行事情を持つ森田草平の長篇小説『輪廻』(大正15年)についての書誌的考察と文学的考察を合わせた発表を2010年4月24日に日本出版学会、11月27日に出版法制史研究会で行った。両研究発表では、参加者から多数の意見を頂いた。この内、書誌的考察については、「森田草平『輪廻』の出版事情-発禁報道、検閲、伏字、版の異同から-」(『出版研究』第41号)として刊行予定である。 また、第3回 東アジア国際新進研究者学術交流会(韓国)において、「「満州」における出版物の流通-その特徴と問題点」として、植民地・満州における出版活動の実態について考察した。昨年度は同交流会において、日本国内の戦中期における出版統制について発表を行ったが、今回はほぼ同時期の満州での実態についての研究成果で、検閲の物的統制の側面をより広く考察したものである。昨年度の成果は、「帝国の出版メディア統制-『新刊弘報』の分析からみるその活動実態-」(『日本学』第31輯)として発表した。 研究計画として挙げていた総合雑誌『改造』の内閲研究は、昨年度までの到達点であった昭和2年から、さらに昭和15年まで調査を行った。本年度も、さらに各大学図書館や国会図書館の蔵本との比較や、書き込み本の調査、また総合雑誌以外の検閲原本の検閲官の書き込みの調査を行い、検閲と内閲の実態を明らかにし、成果として報告する。
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