2009 Fiscal Year Annual Research Report
音楽と身体の関係性に関する歴史的研究―戦前期幼稚園における「遊戯」の理念と実践―
Project/Area Number |
09J05947
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大沼 覚子 Tokyo National University of Fine Arts and Music, 大学院・音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遊戯 / 音楽教育史 / 幼児教育史 / 大正から昭和初期 |
Research Abstract |
本研究は、大正から昭和初期の幼稚園における遊戯の史的展開についての実証的な検討を通して、保育において音楽と身体の関係がどのように捉えられてきたのかを明らかにすることを目的としている。平成21年度は下記の内容について研究を実施した。 ●「游戯」が幼稚園の生活全体にどのように位置づけられていたのかについて:カリキュラムにおける游戯の位置づけを探るため、東京女子高等師範学校附属幼稚園編「系統的保育案」(昭和10年)の内容を検討した。 ●保育者、音楽教育関係者、遊戯関係者たちは保育における「遊戯」をどのようにとらえていたかについて:保育者、音楽教育関係者(東京音楽学校関係者・日本教育音楽教育協会など)たちが、保育における幼児期の音楽活動(遊戯も含め)をどのようにとらえていたのかを探るたあ、『幼児の教育』『教育音楽』『音楽教育研究』等の雑誌より関係する言説を収集し、その内容を検討した。また遊戯教材との関連では、『エホンシヤウカ』(日本教育音楽協会編、昭和6~8年、遊戯教材集としては土川五郎などが振り付けた『子供の舞踊』)にも注目した。 ●大正から昭和初期における遊戯教材の実際について:遊戯創作家土川五郎の表情遊戯(唱歌遊戯)の検討を行った。特に芸術教育運動・童謡運動とのかかわりの視点から、運動の中心的役割を担った童謡絵本雑誌『コドモノクニ』に掲載された童謡に土川が振り付けた作品に注目した。 ●その他、身体と子どもの音楽経験を結びつけた思想について:遊戯以外に、身体と子どもの音楽経験を結びつけた思想として、倉橋惣三の「耳観察」論を検討した。「耳観察」は、倉橋が『ツバメノオウチ』7巻1号(昭和10年)に執筆した論説である。これは、「耳」をもって身の周りにあるものの音を「観察」し(聴き)、ひいては身体全体を通して音とかかわる経験を示すものであった。
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Research Products
(4 results)