2010 Fiscal Year Annual Research Report
音楽と身体の関係性に関する歴史的研究―戦前期幼稚園における「遊戯」の理念と実践―
Project/Area Number |
09J05947
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
大沼 覚子 東京芸術大学, 大学院・音楽研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 遊戯 / 音楽教育史 / 幼児教育史 / 大正から昭和初期 |
Research Abstract |
本研究は、大正から昭和初期の幼稚園における遊戯の史的展開についての実証的な検討を通して、保育において音楽と身体の関係がどのように捉えられてきたのかを明らかにすることを目的とした。 わが匡における「遊戯」は、明治初期に、イギリスとアメリカを経由して導入されたフレーベルの運動遊戯論をベースにしたものであった。しかし、日本で受容された「遊戯」はその後独自の発展を遂げ、独自の意味を持つようになっていった。理念面で特に注目されるのは、土川五郎(1871~1947)の遊戯論である。土川は遊戯を通した教育に、体育と「感情教育」という目標をかかげ、遊戯を芸術教育、表現活動の基礎になる活動や経験と位置づけた。また、倉橋惣三(1882~1955)は、遊戯や唱歌などの音楽活動を「子どもの自発的表現」と「文化としての音楽の教育」という二つの視点から意味づけた。実践面では、明治期初期・中期に続き、明治後期から昭和初期にかけても、「唱歌」と「遊戯」を中心に音楽活動がおこなわれた。カリキュラムにおいても、音楽活動としてはこの二つが代表的な項目としてかかげられた。 以上のように、本研究では、わが匡の保育においては「遊戯」という文脈において「音楽と身体」の関係性が語られ、さかんに行われてきたことを、遊戯の専門家のみならず、保育者側の言説や、保育日誌、実践記録などの資料も用いて明らかにした。なお、筆者は本研究の成果を含む博士後期課程学位請求論文「大正から昭和初期の保育における音楽活動の理論と実際」を平成22年10月に東京芸術大学に提出した。
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Research Products
(2 results)