2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳高次機能に関わる顎口腔顔面領域の時空間的神経ネットワークの解明
Project/Area Number |
09J05978
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Research Institution | Nihon University |
Research Fellow |
坂本 貴和子 Nihon University, 大学院・総合科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 体性感覚野 / 舌 / Negative BOLD効果 / 機能的MRI |
Research Abstract |
本年度は、機能的MRIを用いた神経イメージング手法を用い、舌の前方2/3と後方1/3の体性感覚処理機構の違いを検討した。これは、舌の神経支配が前方2/3と後方1/3で異なることから、神経支配の違いに関連した脳反応の違いがみられるのではないか、という仮説に基づくものであった。さらに舌の解剖学的位置やMRIの特性から、今回の実験では全く新しい装置と方法を開発する必要があった。結果、舌の前方2/3を刺激した際は、ホムンクルスの体性感覚地図を忠実に再現したが、後方1/3を刺激した際は、内蔵感覚を司る領域にまで反応が及んでいた。つまり舌の後方は、舌の前方に比べてより内蔵感覚に近い感覚処理を行っていることが考えられる。また舌の体性感覚刺激時には非常に著名な半球間差が認められた。通常手や足などは、刺激対側半球に反応が認められるが、舌の場合前方刺激の際も後方刺激の際も、右半球優位という結果が得られた。 またこの実験の過程の中で、単純な舌の前方運動をさせた際の、血流が減少した部位について検討を行った。常に一定の血液量を貯蓄する脳の特性上、血流が増加している部位があれば必ず減少している部位がある。このように血流の減少箇所(Negative BOLD効果)は、通常手や足などでは動作を行っている対側半球の運動野にて血流が増加し、動作を行っている同側半球の運動野にて血流の減少が認められる。しかし、舌などの身体の正中にある器官を動作させた際に現れている血流の減少領域について検討した論文は皆無であった。結果、舌の運動時には両側の運動野にて血流の増加が認められ、反対に後頭頂葉や楔前部にて血流の減少が認められた。通常後頭頂葉や楔前部は思考などの高次機能に関与すると考えられており、この結果が舌に特有のものなのか、両側の運動野が同時に活動する全ての運動に言えるものなのかは、今後のより詳細な検討が必要とされる(Sakamoto et al, 2009, Neuroscience Letters)。
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Research Products
(6 results)