2011 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脳高次機能に関わる鶚口腔顔面領域の時空間的神経ネットワークの解明
Project/Area Number |
09J05978
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Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
坂本 貴和子 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 体性感覚誘発脳磁場反応 / 経頭蓋磁気刺激法 / 自発脳波測定 / てんかん / 二次体性感覚野 |
Research Abstract |
これまで私は、舌体性感覚処理機構の検討、咀嚼がもたらす効果についての検討という、顎口腔領域からもたらされる大脳皮質刺激応答特性を検索することを自身の研究の柱としてきた。これらの研究は、昨年私なりの見解や解明出来たことを、本年度は健常者で得られた生理学的知見をひとつの系統として纏め上げることができた。そこで本年度は顎口腔領域に拘らず、特に体性感覚刺激応答の中でも高次脳機能への連結役を担うとされる二次体性感覚野の応答特性を検索することに焦点を当て、まず一つ目に基礎的研究として経頭蓋磁気刺激法を用い、磁気刺激によってもたらされる二次体性感覚野の応答の変遷を検討した。これは東京大学神経内科との共同研究にて実現した実験で、磁気刺激は四連発刺激を用いた。これは運動前野、一次運動野のそれぞれに運動閾値以下の刺激を5ミリ秒間隔にて4連発行うことで、一次体性感覚野の興奮性が増大するという、脳波を用いた先行研究の結果を受け、体性感覚野の応答について脳磁場計測器を用いて検討したものである。残念ながら本年度中に実験が終了しなかったため、論文として形を纏めることは叶わなかったが、これは設備の関係から世界でも東京大学でのみ可能になる実験であることから、この先も継続して実験を行っていく次第である。また昨年度より、てんかん発作とてんかん患者の体性感覚処理機構の関連を調べるべく、てんかんの術前検査で訪れる患者より手の正中神経刺激を行った際のデータを集めてきた。そして本年度我々は、昨年度立てた仮説の通り、μリズムを抑制する目的で手の正中神経刺激を行うことで、自発脳波上のてんかんスパイクの発生頻度が上がるケースが多いこと、そしててんかんの焦点の一によって、体性感覚誘発脳磁場反応に特異的な異常が認められることを発見した。この結果はさらなるデータ採取を行い、慎重に検討を重ね、必ず近い将来臨床の現場へ生かせるよう発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
私のテーマは当初「顎口腔領域の神経ネットワークを解明すること」と領域をあえて限定し、その解明に勤しんできたが、特に東京大学へ移動後てんかん症例や経頭蓋磁気刺激法と出会ったことで、視点を広く、全身へ目を向けることが可能になった。最初のテーマに関しても2編Reviewを纏めることが出来たことから、私なりの結論を呈示することが出来たと自認している。
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Strategy for Future Research Activity |
この三年の中、特に最後の一年は、現在の研究をスムーズに継続することが出来るよう、就職を決めることが出来るよう様々な公募にチャレンジしてきた。しかし現実問題として常勤研究員としての就職は困難であり、私は来年度より九州歯科大学にて大学院特別講師(非常勤講師)としての職を得ることが出来たのみである。これが現在の私の研究続行を困難にしている最大の要因である。ひとまず来年度より私は、現在所属している東京大学において客員研究員として在籍しつつ、現在の研究の継続を目指す予定にしている。科研費への公募が叶わない立場となるが、今後も出来るだけ早く受け入れ先を獲得し、研究を続けていく所存である。
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Research Products
(6 results)