2009 Fiscal Year Annual Research Report
iPS細胞誘導法を応用した造血幹細胞の新たな誘導増幅法の確立
Project/Area Number |
09J06018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡部 基人 The University of Tokyo, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 造血幹細胞 / iPS細胞 / 遺伝子導入 / リプログラミング |
Research Abstract |
申請者はマイクロアレイのデータを網羅的に解析し、造血幹細胞(CD34^-KSL)にて特異的に発現する遺伝子を候補遺伝子として複数抽出した。これらの遺伝子についてレトロウイルスベクターを作成し、フローサイトメーターを用いて分取した造血前駆細胞(CD34^+KSL)へ多重感染により遺伝子導入を行い、造血幹細胞の誘導を試みた。 in vitroスクリーニングの系として、次に示す指標を基に解析を行った。造血幹細胞を一定期間培養すると、分化に伴い表面マーカーの発現が変化し多くの細胞がCD48陽性となるが、CD48陰性である一部の細胞分画(CD48^-KSL)でのみ骨髄再構築能が維持されることが報告されている。そこで、候補遺伝子群の導入を行った造血前駆細胞において、骨髄再構築能を有する細胞分画が出現するかを評価したところ、CD48^-KSL分画の出現をわずかながら観察することができた。 また、同様に候補遺伝子を造血前駆細胞に多重感染させたのちマウスに移植を行い、移植後5週目に末梢血を採取し造血前駆細胞由来の細胞が生着しているかを解析した。その結果、候補遺伝子を導入した群でのみ末梢血中にドナー細胞由来の分化細胞を確認することができた。今後は、長期にわたる骨髄再構築能の評価を行う予定である。以上のことから、候補遺伝子のうちのいくつかが、造血前駆細胞における造血系維持能の増強になんらかの関与をしていることが示唆された。 これまでにES細胞以外から生着可能な造血幹細胞の誘導は成功しておらず、本知見は、分化細胞から造血幹細胞を誘導し得る方法の確立に大きな可能性を示すと考えられる。また、本研究の発案の元となった「血球からのiPS細胞の誘導」は、既にBlood誌に掲載され高い評価を得ている。研究は予定通りに進行しており、大きな問題は生じていない。今後は、候補遺伝子を導入した造血前駆細胞における長期骨髄再構築能の評価を行うとともに、候補遺伝子群の絞り込みを行い、造血幹細胞を誘導しうる遺伝子の特定を行う予定である。
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Research Products
(9 results)