Research Abstract |
本課題の目的は,教室という社会における子どもの挙手行動のメカニズムを検討することであった。本年度は,前年度の研究から得られた課題を踏まえ,子どもの挙手と教師の指名行動の関連に焦点化した研究を行った。 具体的には,教室授業場面における「教師の発問-子どもの挙手-教師の指名」という一連の相互作用に限定し,小学校2年生の2学級の算数授業を対象に授業撮影を行った。研究協力者の教師2名は,それぞれ若手教師(教職歴2年),中堅教師であった。教師の発問の分類および発問後の教師の待ち時間(Rowe,1986)を分析の指標として,子どもの挙手行動と教師の指名行動の関連の検討を行った。その結果,中堅教師よりも若手教師の待ち時間が有意に長く,子どもの発言を引き出すことに注力していることが推察されたため,発問後の待ち時間は,子どもの積極性を促す意味においては重要な変数であると考えられる。しかし,発問あたりの待ち時間が長くなることにより,授業中の時間的空白も長くなり,教師と子どもの相互作用が減少する可能性も考えられる(澤邉・野嶋,2010)。 以上より,教室授業場面に限定されたものではあるが,挙手行動が授業文脈や教師の授業方略に関連していることを踏まえると,子どもと教師の相互作用という視点だけではなく,学級運営や教師の協働的実践という観点から,どのようにして子どもの積極性を評価するかという課題も挙げられる。そのため,今後は,教師の力量形成という観点から,教師だけではなく,研究者や企業などと連携しながら,協働的な実践を展開する中で,授業開発等の段階において,それぞれが実践を省察する過程で子どもの積極的な学習行動を意味づける必要があると考えられる。
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