2010 Fiscal Year Annual Research Report
米価下落期における水田農業構造改革の条件に関する地域比較研究
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09J06166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西川 邦夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 水田農業 / 米需要構造 / 米価下落 / ロット確保 / 大規模個別経営 / 農地流動化 / 安定供給 |
Research Abstract |
我が国の水田農業は現、急速な構造変動に見舞われている。構造変動のメカニズムを解明することは、農業経済研究における中心的課題である。 本研究では、米需要構造の転換が水田農業構造変動に影響を与える、という仮説に立って分析を進めた。米需要構造が水田農業構造に影響を与える経路について、以下の2点を設定した。 (1)価格の下落、(2)取引ロットの拡大 これまでの研究で得られた知見は、以下の4点である。 1)最終消費者段階における低価格志向への転換と中食・外食消費の拡大 1997年を起点とする日本経済の危機と大規模な雇用調整の影響を受けて、消費者の購買力は低下した。その結果、特に低所得層を中心として低価格志向が深化し、低価格志向を貫徹しやすい中食・外食消費を増大させた。 2)食品小売業及び中食・外食産業における低価格・ロット志向の強まり 消費者の低価格志向の深化を受けて、食品小売業及び中食・外食産業は仕入れにおいてロット志向を強めた。 3)米価下落による農家の離農の促進と大規模個別経営の形成 昭和一桁世代の引退期に米価下落が直撃し、従来の稲作機械作業委託から、耕作権自体を貸し付ける通年賃貸借によって離農が進んだ。離農した農家の農地は特定の経営に集積され、大規模個別経営が層として形成された。 4)農業経営・JA系統の販売戦略とロット確保・安定供給志向への転換 米需要構造の転換を受けて、農業経営・JAの販売戦略は以前の【良食味米作付拡大・高価格販売】から、各主体が確保できるロットに応じて、そのロットをいかに安定的に売っていくかという【ロット確保・安定供給志向】へと転換した。 以上得られた知見をもとに、東京大学大学院農学生命科学研究科に学位申請論文「米需要構造の変化と水田農業-1997年以降の米穀市場の展開-」を提出、平成22年7月2日に学位(博士(農学))が認定された。 また、複数の研究発表を行い、研究成果を発信した。
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Research Products
(2 results)