2009 Fiscal Year Annual Research Report
魚類の浸透圧調節としてのカルシウムケーキ形成機構の解明
Project/Area Number |
09J06174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬久地 みゆき The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 浸透圧調節 / ウナギ / カルシウムケーキ / 魚類生理学 |
Research Abstract |
海水魚は外界の海水と体内とに生じる浸透圧差により、常に脱水されているため水を補う必要がある。そこで海水魚は海水を飲み、水を吸収するが、水吸収に先立ち飲んだ海水からイオンを除去する必要がある。2価イオンは腸内でイオン化しているCaおよびMgを沈殿し炭酸塩を形成させることで腸内から除去される。これらのCa,Mg炭酸塩(カルシウムケーキ)が形成されるには重炭酸イオン(HCO_3^-)が必要である。そこでHCO_3^-の分泌機構を明らかにするために、ウナギを用いてHCO_3^-の分泌器官を同定し、さらにHCO_3^-輸送体を解明しようと試みた。 HCO_3^-分泌器官を同定するために、HCO_3^-分泌候補器官を除去した個体を作成し、カルシウムケーキ形成量を比較した。その結果、膵臓除去個体の形成するカルシウムケーキ量が減少したことより、膵臓から分泌されるHCO_3^-がカルシウムケーキを形成していることが分かった。また同時に腸から分泌されるHCO_3^-も膵臓と同等に寄与することが分かった。 分子レベルでHCO_3^-の分泌を解明するために、細胞膜上に存在するHCO_3^-輸送体を同定した。現在HCO_3^-イオン輸送体はsolute carrier(SLC)4、SLC26、ATP-binding cassette(ABC)輸送体ファミリーに属する数十種類が報告されている。これらのうちカルシウムケーキを形成するために必要なHCO_3^-を分泌すると考えられる輸送体(Slc4a1,Slc4a2,Slc4a8,Slc26a1,Slc26a3,Slc26a6A,Slc26a6B,Slc26a6C,Slc26a9,Slc26a10,Slc26a11,CFTR)を網羅的に解析した。まず、ウナギにおいて得られていないHCO_3^-輸送体のcDNA配列をクローニングし、得られた配列を基に組織別発現解析を行った結果、膵臓ではSlc4a8,Slc26a1,Slc26a6A,CFTR、腸ではSlc4a2,Slc26a1,Slc26a3,Slc26a6B,Slc26a11,CFTRが発現していた。カルシウムケーキは海水環境でのみ形成されることより、海水環境で多く発現するHCO_3^-輸送体はカルシウムケーキ形成に必要なHCO_3^-を分泌していると考えられる。そこでリアルタイムPCRを用いて淡水馴致個体、海水馴致個体、淡水から海水に移行後24時間後個体におけるHCO_3^-輸送体の発現量を測定した。膵臓においてはSlc26a1,Slc26a6A、腸においてはSlc26a1,Slc26a3がカルシウムケーキ形成に必要なHCO_3^-を分泌していることが強く示唆された。
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Research Products
(2 results)