2011 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒パルスレーザーを用いた光誘起相転移ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09J06182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 紘崇 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / フェムト秒過渡反射分光 / 有機電荷移動錯体 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
○ダブルパルス光励起を用いた光誘起相転移の研究 光誘起相転移は、光照射によって物性が大きく変化する現象であり、光メモリや光スイッチの動作原理として期待されている。実際に、応用への展開を図る上で、光誘起相転移の高効率化や、1ピコ秒以内に物質の状態を切り替えることが重要な課題となっている。本年度は、ダブルポンプパルスを用いて、高効率化や高速スイッチングを実現することを試みた。 i)光誘起電荷秩序融解の高効率化 光照射によって、ペロフスカイト型マンガン酸化物の電荷秩序型反強磁性絶縁体(COI)相から強磁性金属相(FM)が形成される例は、非常に少ない。その理由として、COI相とFM相の結晶構造の違いが指摘されている。前年度までの研究により、Pr0.6Ca0.4MnO3では、光誘起電荷秩序融解に伴い、結晶構造が過渡的にFM相の構造に近付くことが示唆された。そこで、ダブルポンプパルス励起をPr0.6Ca0.4MnO3に行い、一つ目のポンプパルスで結晶構造を変化させ、二つ目のポンプパルスでFM相への転移を引き起こすことを試みた。その結果、二つ目のポンプパルスによる光誘起電荷秩序融解の効率を、単一パルスで励起する場合の約1.5倍にまで増大させることに成功した。光誘起相がFM相であるか否かは、今後、過渡反射率スペクトルや時間分解磁気光学カー効果の測定を行うことにより、確かめることが必要である。 ii)光誘起中性-イオン性-中性スイッチング 前年度までの研究により、TTF-CAでは、光照射による中性→イオン性、および、イオン性→中性転移が20フェムト秒以内に生じることが明らかになった。そこで、15~20フェムト秒パルスを用いたダブルポンプパルス光学系を構築し、一つ目のポンプパルスで中性相をイオン性相に転移させ、二つ目のポンプパルスで光誘起イオン性相を中性相に転移させることを試みた。しかし、その結果、二つ目のパルスによる中性相への転移は現れなかった。本年度は、期待通りの結果を得ることができなかったが、今後、ポンプパルス間の時間遅延やポンプ光の波長等を調整することで、光による物質相の超高速制御の実現に向けて探索を行うことが期待される。
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Research Products
(4 results)