2009 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒パルスレーザーを用いた光誘起相転移ダイナミクスの研究
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09J06182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 紘崇 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / フェムト秒過渡反射分光 / 有機分子性結晶 / 遷移金属酸化物 |
Research Abstract |
・時間分解能20fs過渡分光測定系の作成 従来使用していたパルス幅約20~30fs、時間分解能約30~40fsの過渡分光測定系を改良し、パルス幅約15fs、時間分解能約20fsの過渡分光測定を実現した。これによって有機分子結晶の光誘起相転移における超高速分子変形ダイナミクスや分子間の電荷移動過程を実時間領域で検出することが可能になった。 ・時間分解能20fsポンププローブ分光測定によるTTF-CAの光誘起中性-イオン性転移ダイナミクスの研究 交互積層型の有機電荷移動錯体tetrathiafulvalene-p-chloranil(TTF-CA)は光照射によって中性相とイオン性相との間で相転移を起こすことが知られている。本研究では、上述の時間分解能20fsの過渡分光測定系を用いて、TTF-CAの光誘起中性-イオン性転移ダイナミクスを調べた。本研究によって、光誘起中性イオン性転移の初期過程と電荷の変化に伴う超高速分子変形ダイナミクスが明らかになった。前者に関しては、中性イオン性転移が電子的な過程であることが明らかになった。また、中性イオン性転移における電荷の変化によって、その電子状態を安定化するために分子変位や分子変形が誘起され、それらの格子変形がさらに電子状態を変化させ、再び格子系に影響を及ぼす、という有機分子性結晶における極めて複雑な電荷-格子複合ダイナミクスを観測することに成功した。 ・30fsダブルポンプパルス過渡分光測定系の作成 パルス幅30fs、時間分解能40fsのダブルポンプパルス過渡分光測定を実現する光学系の作成を行った。これにより、1発目のパルス光励起によって誘起された分子変形(約70~150fs)や分子変位(約200fs以上)にタイミングを合わせて2発目のパルス光励起を行うことが可能になった。 ・30fsダブルポンプパルス過渡分光測定によるアルカリ-TCNQの光誘起スピンパイエルス相融解での二量体格子変位回復ダイナミクスの測定 上述のダブルポンプパルス過渡分光測定系を用いてアルカリ-TCNQの光誘起スピンパイエルス相融解のダイナミクスを調べた。本研究では、二量体の融解に伴って発生するTCNQ分子のコヒーレント振動の振幅が光励起前の二量体格子変位の大きさに比例することに注目した。2発目の励起パルス光によって誘起されるコヒーレント振動振幅を1発目2発目の励起間隔を変化させながら測定することによって、1発目のパルス光励起によって融解した二量体格子変位が回復していく過程を高精度に測定することに成功した。
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Research Products
(16 results)