2010 Fiscal Year Annual Research Report
フェムト秒パルスレーザーを用いた光誘起相転移ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
09J06182
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 紘崇 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 光誘起相転移 / 強相関電子系 / フェムト秒過渡反射分光 / 有機分子性結晶 |
Research Abstract |
・サブ10 fsレーザーパルス発生用非同軸光パラメトリック増幅器(NOPA)の製作 従来使用していた15 fsレーザーパルスを用いた過渡分光測定では、光誘起相転移における電荷移動過程や分子変形を観測するにあたって十分な時間分解能が実現できない。そこで新たに、パルス幅10 fs以下の超短パルスレーザーを発生させるためのNOPAの製作を行っている。現段階では、500nm~750nmの帯域における、パルス幅8 fs、光強度約500 nJ/pulseのレーザーパルスの発生が実現している。現在、過渡分光測定を行うために、より安定かつ高強度のレーザーパルスを目指して改良を行っている。 ・Rb-TCNQ(II)の光誘起スピンパイエルス相融解に伴うコヒーレント振動の観測 一次元モット絶縁体Rb-TCNQ(II)は、本研究課題で取り扱っているアルカリ-TCNQの一つである。多くのアルカリ-TCNQはスピンパイエルス転移を起こす。しかし、Rb-TCNQ(II)では、実験精度の範囲では二量体格子変位が観測されておらず、スピンパイエルス転移を起こしているか否かが不明であった。本研究では、光照射により発生するコヒーレント振動を観測し、その温度依存性を調べることで、X線回折では検出できなかった微小な二量体格子変位が生じていることを明らかにした。 ・Rb-TCNQ(II)における光キャリアの性質に関する研究 一次元電子系では、電子格子相互作用が無視できる場合には、電荷励起にスピン励起を伴わないと考えられている。本研究では、Rb-TCNQ(II)のスピンパイエルス相に光キャリアをドープし、その誘導反射スペクトルを調べた。モデル計算と比較しながら詳細に解析した結果、スピン励起を伴う電荷励起が存在することを明らかにした。一次元電子系においても、スピンパイエルス相のように格子変形が生じると、電荷励起とスピン励起が結合することを示した。現在、本研究の成果に関して論文執筆中である。 (筑波大学の前島展也先生、分子科学研究所の米満賢治先生との共同研究(数値計算を担当)。著者は、過渡反射分光測定を担当。) ・15 fsレーザーパルスを用いたTTF-CAの光誘起イオン性-中性転移ダイナミクスの研究 有機電荷移動錯体TTF-CAの光誘起イオン性-中性転移ダイナミクスを15 fsレーザーパルスを用いて調べた。イオン性-中性転移特有の分子変位ダイナミクスを発見し、光生成したイオン性状態と周囲の中性状態の両方で分子変位が生じているというモデルで説明することができた。
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Research Products
(17 results)