2009 Fiscal Year Annual Research Report
外界認識の種比較-トップダウン/ボトムアップ処理の観点から-
Project/Area Number |
09J06245
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邉 創太 Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 知覚・認知 / 動物:ハト・ニワトリ / トップダウン処理 / ボトムアップ処理 / ツェルナー錯視 |
Research Abstract |
報告者は、認知について、対象となる種が何か、当該の認知過程がトップダウン制御中心かボトムアップ処理中心か、分析対象次元は何の次元かという3要因から成るブロック状に結果を整理し、隣り合うブロック(ないしブロック群)を比較検討するという手法で分析した。「ヒトとハトとの認知処理過程の相違はボトムアップレベルにある」という仮説を立て、この仮説を、次元・種の要因を考慮に入れ総合的に検証した。トップダウン処理の研究として、ハトにおける経験要因を統制した長さ判断実験を行なった。この実験は、これまで統制困難とされてきた個体の経験要因について、2つの判断様式についてそれぞれ十分な経験を与えた個体間の直接比較を行うことで経験要因を統制するという報告者オリジナルの手続きを採用した。結果から、ハトは長さ次元の判断の際、絶対判断よりも相対判断の精度の方が高いことが示唆された。この結果は報告者の過去の研究やヒトで行われた実験結果と同じ傾向である。また報告者は、ハトにおいてヒトと同様ツェルナー錯視知覚が見られるかを実験した。結果、ハトはツェルナー錯視図形に対しヒトと逆傾向の錯視知覚をすることが示された。このような逆傾向の錯視知覚は、エビングハウス錯視図形においても見られており、Nakamura, Watanabe, Fujita(2008)が提唱した、ハトはヒトと同様に同化効果の影響を受けるが対比効果の影響を受けないとする仮説で説明できる。さらなる分析は必要ではあるが、以上より、報告者の提唱する仮説「ヒトとハトとの認知処理過程の相違はボトムアップレベルにある」は現状では支持されている。さらに報告者は、逆ツェルナー錯視はチャボでも同様に確認しており、Nakamuraら(2008)や報告者の提唱した仮説はハトのみならず鳥類に普遍的に適用できる可能性を示唆するものである。
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Research Products
(9 results)