2009 Fiscal Year Annual Research Report
腸管の恒常性維持におけるSTAT3の意義~WNTとのクロストークを通じて~
Project/Area Number |
09J06262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神田 啓太郎 Kyoto University, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Stat3 / Il-6 / 大腸がん / CXCL5 |
Research Abstract |
本研究は、腸管の恒常性維持におけるStat3の役割を検討することを目的とする。Villin-CreマウスとStat3 f1/f1マウスを交配し、上皮細胞特異的にStat3が欠失するVillin-Cre Stat3 f1/f1マウスを作出した。同マウスの腸管上皮ではWTと較べて、定常状態の細胞増殖・細胞画分には差が無かったが、マウス内視鏡によりbiopsy injuryを作成したところ、創傷治癒は有意に遷延した。ところが、これらの実験を遂行中に、他の研究グループから同様の実験結果が先んじて報告された(Pickert G et al., J Exp Med.2009)。同論文は、腸管上皮特異的にStat3を欠失させたマウスが、薬剤生腸炎や物理的粘膜障害に弱いことを示したもので、我々の仮説の一部を立証するものであった。 我々は申請時の計画を早め、Stat3の上下流因子の解析を中心に以下の実験を行った。 1.Stat3の下流で働く因子同定のため、消化管癌上皮細胞株でStat3活性を低下させ、mock群と比較した網羅的なRNA発現定量解析を行った結果、最も変動の大きかった因子としてCXCL5を同定。CXCL5は注目の骨髄由来抑制細胞の走化因子であるため、各種遺伝子改変マウスを用いて骨髄由来抑制細胞の流入を検討中である。 2.IL6はStat3の活性を制御する最も重要な因子の一つであり、IL6/slL6R複合体によるStat3のトランス活性化機構が注目されている。IL6Rのsheddingを制御する因子に着目し、Wntシグナルに異常を有するApcMinマウス等を用いて、IL6RのsheddingがStat3を介してWntシグナルに与える影響を検討し結果を解析中である。 これらの検討によりStat3を中心とした腸管の恒常性維持機構における諸因子を同定し、得られた知見を種々の腸疾患治療に結びつけることが期待される。
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Research Products
(2 results)