2010 Fiscal Year Annual Research Report
腸管の恒常性維持におけるSTAT3の意義~WNTとのクロストークを通じて~
Project/Area Number |
09J06262
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
神田 啓太郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Stat3 / IL-6 / 大腸がん / CXCL5 |
Research Abstract |
本研究は、腸管の恒常性維持におけるStat3の役割を検討することを目的とする。平成21年度にはStat3の上下流で働くIL6RおよびCXCL5の解析を中心に検討を行ったため、平成22年度は引き続き以下の実験を行った。 1.IL6Rは、IL6/sIL6R複合体を形成してStat3をトランス活性化する。本年度は、メタロペプチダーゼM16ファミリーのひとつであるNardiysin (NRDc)が、IL-6Rのシェッディングを介して、Stat3のトランス活性化を制御することを胃癌・大腸癌細胞株で見いだした。 2.NRDcはTNF-alphaの細胞外ドメインをシェディングすることが知られている。胃癌・大腸癌細胞株で、NRDcはTNF-alpha→NF-kappaB→IL-6→Stat3という経路でもStat3の活性化に寄与することを見いだした。また、NRDcが胃癌・大腸癌細胞株からのCXCL5産生を制御することも見いだした。 上記1.2の実験結果から、in vitroでNRDcがStat3の活性制御等に重要であることを示した。 3.NRDcのヘテロノックアウト・マウスを用いて薬剤により腸炎を誘発すると、WTマウスに比べ腸炎の程度が軽減していた。同時に、NRDcのヘテロノックアウト・マウスでTNF-alphaおよびIL6Rのシェッディングは減弱しており、腸炎局所におけるStat3の活性化も減弱していた。 上記3の実験から、生体腸管においてもNRDcがStat3の活性制御を行う因子であることが明らかとなった。 これらの検討を通じて、腸管の恒常性維持機構におけるStat3の役割とStat3を中心としたネットワークのなかでNRDcが重要な役割を果たすことが示された。Stat3とNRDcを中心に据えたこれらの知見は、将来種々の腸疾患治療に結びつく可能性があり、その学術的意義は大きいものと考える。
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Research Products
(1 results)