Research Abstract |
本研究は,渓流食物網における窒素(N),リン(P)フローを生態学的化学量論の観点から解明するため,様々な底生動物種や魚類種について(1)食物資源の元素比とその変異(2)栄養素要求(NとPのどちらにより生存,成長,発育が影響されやすいか)(3)発育段階及び食物条件による体組織元素比の可塑性(4)回帰する栄養塩の特性(NとPの回帰速度)さらに(5)栄養塩添加に対する,落葉リター,微細有機物,藻類のN:P比変化(6)渓流における各発育段階の底生動物種,魚類種についてのバイオマスの季節変化を明らかにすることを目的とする。 そこで本年度は,渓流における底生動物種についてバイオマス変化の季節変化を明らかにするため、毎月一回,底生動物(シュレッダー)をサンプリングし,研究室へ持ち帰り,同定と齢の判別を行った。また,春季と秋季にシュレッダー若齢個体の集中採集を行い、これらの食物資源である数種の樹種の落葉リターと,渓流水も同時に採取し、以下の室内実験を行った。[1]渓流水中の硝酸態N,アンモニア態N,リン酸態P濃度の測定:薬品で目的物質を発色し,分光光度計により定量した。[2]落葉リターにおけるC,N,P含有率の測定:C,NはNCSアナライザーを用いて定量。Pは薬品で目的物質を発色し,分光光度計により定量した。[3]シュレッダーの飼育実験および体組織のC,N,P含有率の測定:エアーポンプによる送気がなされた水槽をインキュベーター内に置き,恒温条件で飼育した。元素分析については[2]と同様に行った。また、数種の底生動物(コレクター)について体組織のC,N,P含有率の測定を行った。 今後は,底生動物(コレクター,グレイザー,プレデター)や魚類についてもシュレッダーと同様の実験を行い,栄養塩回帰によるファシリテーションが実際に生じうる消費者の組み合わせを特定し,現実の渓流食物網のN,Pフローにおけるそれらの重要性を評価する。
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