2009 Fiscal Year Annual Research Report
超流動ヘリウム中における量子渦のケルビン波の検出とそのダイナミクスの解明
Project/Area Number |
09J06355
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
永合 祐輔 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超流動ヘリウム / 量子渦 / 量子乱流 / 振動流 |
Research Abstract |
超流動ヘリウム中量子乱流生成の原因の一つである、振動流によって量子渦上に誘起されるケルビン波を超伝導細線振動子で観測するための実験法の開発を行った。ケルビン波検知のためには、振動子の頂点と天井の間に橋渡しする渦糸を実現させ、振動子まわりの余分な渦をできるだけ少なくする必要がある。そこで、新しい引き抜きダイスによりこれまで以上に細い直径2μmの細線を作ることで表面がよりなめらかなものを作る技術を得、この細線振動子を銅箱で覆い超流動転移点前後を2時間かけてゆっくり冷却した。その結果振動子に付着する渦を減らすことに成功した。さらに、この条件のもと、振動子頂点に天井を100μm以内に近づけた状態で冷却したところ、振動子の頂点と天井の間に橋渡しする渦糸を確実に付着させることに成功した。 以上の条件をもとに、ピエゾアクチュエータを用いて振動子と天井の間の距離を変えて測定すれば、渦糸上に励起されるケルビン波の高次モードの検出が期待される。そこで予備実験として、超流動温度でピエゾアクチュエータがどの程度可動領域を持つかをキャパシタンス法で測定したところ、±60μm動くことがわかった。これは数倍モードのケルビン波共鳴を観測するのに十分な可動領域である。したがってケルビン波検出のための実験手法がすべて整った。 これらの実験法を取り入れた実験セルを作成し、まず超流動ヘリウム高温領域(~1K)でケルビン波探索実験を行った。しかし、ケルビン波による信号を得ることはできなかった。この理由として高温領域では超流動ヘリウム中に常流動成分が存在し、それが渦との間に相互摩擦を起こしてケルビン波が減衰してしまっている可能性が考えられる。よって、常流動成分が存在しない、より低温で実験を行う必要があると判断し、現在低温領域(~50mK)での測定を行うための実験セルの設計・作成が進行中である。
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Research Products
(4 results)