Research Abstract |
本研究は,従来の圧電アクチュエータとは異なる原理で駆動し,パルス電圧で駆動でき,圧電歪みの維持に電圧の印加を必要としない形状記憶圧電アクチュエータの原理の解明,設計,パフォーマンスの向上を目的とする.前年度では形状記憶圧電アクチュエータを電界インプリントを用いずに実現する方法を提案・実証し,強誘電体セラミックスを用いたX線回折により,歪のメモリ効果がミクロには非180゜ドメインの非対称な回転に起因することを示した.本年度は圧電応答顕微鏡(PFM)を用いてセラミックス表面のドメイン状態を明らかにした.PFMは,原子間力顕微鏡と圧電効果を組み合わせることで,強誘電体表面の微細なドメイン構造を観察できる装置である.PFMを用いて,形状記憶圧電アクチュエータの二つの安定状態を観察したところ,一方の安定状態ではcドメインが優勢であり,またもう一方の安定状態では,aドメインが優勢であることが明らかとなった.これにより,形状記憶圧電アクチュエータにおける歪みメモリの原理が,非180゜ドメインの回転であることがミクロな点からも確認された.またユニモルフ型の形状記憶圧電アクチュエータを用いて,アクチュエータの疲労特性および保持特性の評価を行った.アクチュエータを100万回連続駆動し,そのメモリ量の変化を測定した.その結果,アクチュエータは100万回駆動後において,その歪みメモリ量の80%程度を維持し,駆動可能であることを確認した.また,形状記憶圧電アクチュエータにおいて電圧印加なしの状態での歪の安定性は重要である.そこで,アクチュエータの分極,脱分極状態のそれぞれの状態において,歪の時間変化を測定した.その結果,各状態において,歪は時間の対数関数で減少するものの,1年後に見積もられる歪の変化は10%以下であると分かった.
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