2009 Fiscal Year Annual Research Report
温度可変角度分解光電子分光による有機半導体中のキャリア伝導機構の解明
Project/Area Number |
09J06359
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大伴 真名歩 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 有機半導体 / 角度分解光電子分光 / エピタキシャル薄膜 / 配向制御 / ペンタセン / DPh-BTBT / バンド分散 / ビスマス |
Research Abstract |
バンド分散は固体物理学における基本的な概念であるにもかかわらず、有機半導体のバンド分散はごく一部の物質を除いて未解明であり、基礎科学の観点からも、高移動度有機半導体の設計指針といった応用の観点からも、様々な有機半導体のバンド分散を明らかにすることが望まれている。 バンド分散は角度分解光電子分光(ARPES)で測定されるのが一般的であるが、有機半導体でARPES測定を行ううえで障害となるのは、試料となる有機半導体結晶の伝導度の低さによるチャージアップ、そして表面敏感なARPESに要求される、In-situでの試料作成もしくは表面清浄化の困難さである。まずこれらの問題を解決し、角度分解測定に適した試料を作成する手法を開発することが重要である。 ARPES測定に適した試料を作る手法として、我々のグループではビスマス終端化シリコン基板上にエピタキシャル成長させたペンタセン薄膜の配向を揃えることによって、ARPES測定に適した高伝導度・単一配向の薄膜を作成することに成功しており、薄膜相ペンタセンのバンド分散を報告している。本年度はこの手法をさらに拡張し、ビスマスの被覆率とそれに伴う表面の再構成を制御することで基板の濡れ性を最適化し、ペンタセンより疎水性である、DPh-BTBT(2,7-Diphenyl[1]benzothieno[3,2-b][1]benzothiophene)という分子についても単一配向薄膜を作成することに成功している。DPh-BTBTは小さい再配置エネルギーと硫黄同士の大きなカップリングが期待されることから、高移動度有機半導体として期待されている分子であり、今後この分子のバンド分散を解明することが、高移動度有機半導体の設計指針の確立に資することが期待される。
|
Research Products
(3 results)