Research Abstract |
本研究の目的は,身振りは幼児期から発話生成に影響を及ぼしているのか,また,身振りの使用が言語発達と共にどのように変化するのか,ということを実証的に検討することである。この目的を遂行するため,今年度は,以下の4点の研究活動を行った。 第一に,身振りの産出モデルを修正し,年齢段階に応じた産出モデルを構築した。 第二に,1年目の結果をまとめ,国際身振り学会で発表し,学術誌に論文が掲載された。 第三に,児童期の子どもは,空間関係の説明において,眼前の空間をどのように利用しているのか,という問題を検討するため,研究2を実施した。さらに,これまで幼児と成人を対象に収集した経路説明のデータと比較検討し,身振りによる空間利用の発達的経路を明らかにした。バーミンガム大学のKita研究室を訪問し,身振りと空間利用に関する研究技法を習得した。 第四に,研究1と2を補うデータとして,教室内における自然状況下での子ども同士の相互作用の観察を継続して行い,身振りと発話の縦断的な資料を収集した。 以上のことから,児童期後半から,談話知識とともに,人物参照のための身振りが出現することが明らかになった。この知見は,談話構築がマルチモーダルに達成されていることを明らかにするデータであり,これまで言語を中心に分析をしてきた談話研究に新たな視点を提供するものである。
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