2010 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙背景放射の新たな解析手法の提案とそれを用いた精細宇宙論の展開
Project/Area Number |
09J06380
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 正裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 宇宙背景放射 / 非正準運動項 / インフレーション / パワースペクトル / Bモード偏光 / アインシュタイン-エーテル理論 |
Research Abstract |
本研究課題は、宇宙背景放射(CMB)非等方性の起源・性質を理論的・観測的に明らかにすることを目的としているが、本年度は近い将来観測的に重要になる諸効果を理論的に検討する研究を行った。まず一つ目の研究として、超弦理論等の高エネルギー物理でしばしば登場する非正準運動項を含むようなインフレーションモデルにおいて重要なパラメータとなる揺らぎの伝搬速度(音速)が時間変化する場合に、揺らぎのパワースペクトルにどのような影響が表れるかを確かめた。本研究によって、揺らぎの音速が突然変化するという過程の下では揺らぎの進化を完全に解析的に計算することが可能であることを明らかにされた。パワースペクトルには地平線より小さいスケールで定振幅の振動が発生することを解析計算により、また物理的な考察により、確認した。もう一つの研究として、ベクトル場を含むような修正重力理論(アインシュタイン-エーテル理論、以下EA理論)がこの宇宙で実現していた場合に、CMB偏光にどのような影響が表れるかを調べた。この研究は、近年、重力理論の本性を暴く上で重要な観測量であると期待されるCMB偏光のパリティが奇のモード(Bモード)が、ベクトル量から効率よく生成されるという従来知られていた事実に動機づけられているが、EA理論は時間変化するベクトル場の揺らぎが理論の整合性を保ちつつ大振幅で存在し得る希少な理論であり、本研究によって初めて、初期宇宙から存在するベクトル揺らぎから生成されるBモードが重力波起源のものを凌駕し得ることが明らかにされた。 以上、本年は、温度揺らぎのパワースペクトルに現れる特異な振る舞いと、Bモードの新たな生成起源に焦点を当てて研究を行った。
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Research Products
(1 results)