2009 Fiscal Year Annual Research Report
井原西鶴の浮世草子と大名家の諸伝に関する研究―岡山藩とのかかわりを軸に―
Project/Area Number |
09J06392
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 あゆす (長谷 あゆす) Kyoto University, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 井原西鶴 / 岡山藩 / 浮世草子 |
Research Abstract |
西鶴浮世草子において、大名家(特に岡山藩)の諸伝がどのように取り上げられ、どのように作品化されたかを明らかにするため、今年度は以下の研究を行った。 まず、西鶴が素材とした実在人物及び出来事を探索・特定するための基礎作業として、岡山藩にかかわる主要文献の調査を行った。具体的には、『池田光政日記』『池田家履歴略記』等近世期における岡山藩関係資料をもとに池田家藩主と家臣・藩中の主要事件・政策に関する主要情報をリストアップし、京都大学蔵『岡山藩旧記』他諸資料の調査を経て、承応~明暦期における藩内情勢・藩士の動向に関する情報補完を図った。 また、上記の取り組みと並行して、西鶴浮世草子--主として『武道伝来記』『武家義理物語』等の武家物及び『懐硯』『本朝二十不孝』等の雑話物--を対象とし、岡山藩中の人物・事件を意識したと考えられる章を洗い出した。これらを関係資料と併せてより詳細に検討した結果、従来一作品の典拠として指摘されていた岡山藩の風聞が、実は他の作品の素材としても利用されていることが判明した。また、場所を他の藩中に設定しながらも、岡山藩の事件を巧みに暗示している例も確認された。現在、西鶴俳諧における付合例や作中の事物に関係する資料を集めつつ、西鶴が各話をどのように演出し、彼独自の「はなし」に仕立て上げたかを考察中である。 なお、今年度は浮世草子における「モデル小説の方法」のバリエーションを把握し、西鶴研究の参考とするべく、近世中期に刊行された浮世草子『世間化物質気』に関するモデル研究をも行った。ここで得られた成果は平成21年度近世文学会秋季大会にて口頭発表を行い、現在論文を執筆中である。
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Research Products
(1 results)