2009 Fiscal Year Annual Research Report
ES細胞、iPS細胞を用いた血管内皮細胞分化機構の解析
Project/Area Number |
09J06481
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山水 康平 Kyoto University, 再生医科学研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ES細胞 / iPS細胞 / 分化誘導 / 血管内皮細胞 / VEGF / cAMP / 動脈 / 血管前駆細胞 |
Research Abstract |
生物発生過程において最も早く形成される臓器の一つが血管であり、生命体の形成、維持に深く関与している。当研究室では、胚性幹(embryonic stem : ES)細胞を用いて中胚葉マーカーであるVEGF(vascular endothelial growth factor)2型受容体(F1k1)陽性血管前駆細胞にVEGFを添加することにより内皮細胞を分化誘導するシステムを構築した。さらにVEGF及びcAMP(cyclic adenosine monophosphate)の活性化により(1)内皮細胞分化の促進と、(2)動脈内皮細胞の誘導が起こることを見出した。本年度の研究では、血管分化多様化機構、特に新たに見出したcAMPの作用機構を解明することを目的とし、上記(1),(2)の分子機構を解析した。 (1)cAMPの下流因子であるPKAは内皮細胞分化や3次元血管構造形成を著しく促進した。PKA過剰発現により、VEGF受容体であるF1k1及びNeuropninlの発現が上昇しており、10倍以上低濃度のVEGF添加でも内皮細胞分化が誘導され、F1k1-VEGF165-Neuropilinlタンパク複合体形成も認められた。cAMP/PKAシグナルは血管前駆細胞の内皮細胞分化能を促進することを明らかにした。本研究は、平成21年10月22日発行Blood第114巻第17号3707頁~3716頁に掲載された。 (2)cAMPの動脈誘導効果は、Notch及びβ-cateninシグナルを活性化することに起因することを見出した。β-catenin及びNotchを同時に活性化することにより動脈内皮細胞が分化誘導され、RBP-J-Notch-β-cateninが動脈内皮細胞特異的にタンパク複合体を形成していた。cAMP/Notch-β-cateninシグナルは、新規動脈特異的タンパク複合体を形成し、動脈内皮細胞を誘導することを明らかにした。平成22年The Journal of Cell Biologyに掲載予定である。 (1)、(2)の研究で行った詳細な解析により、内皮細胞分化・多様化におけるcAMPシグナルの新しい意義を明らかにした。これらの研究成果は血管発生機構の新たな理解をもたらすと共に新規血管再生医療の開発につながると考えられる。今後は、更なる詳細な機構解明に取り組み、ヒトiPS細胞を用いた臨床応用へ向けた研究を行っていく予定である。
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