2009 Fiscal Year Annual Research Report
人間の言語理解過程における一般的認知機能の役割について
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09J06486
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大石 衡聴 The Institute of Physical and Chemical Research, 言語発達研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 文処理 / ガーデンパス文 / 抑制機能 / 個人差 / 作動記憶 |
Research Abstract |
本年度は、まず、実行機能(Executive Function)の1つである抑制機能(inhibition function)が、オンラインで文を処理している際に利用されているという確証を得るための行動実験を実施した。具体的には、「警官が犯人を捕まえた青年にお礼を言った。」のようなガーデンパス文を文節ごとに被験者に呈示し、各被験者が意味解釈を修正するのに要する時間(ガーデンパス量)が、ストループ課題などの反応抑制課題におけるパフォーマンスや作動記憶容量などによって予測可能かどうか検証した。ガーデンパス文におけるターゲット領域(意味解釈の修正が必要であることが発見される文節を指す。上記の例文における「青年に」)における読み時間が統制条件と比較して有意に長いこと、ストループ課題および非言語的抑制課題であるAttention Network Testの逸脱条件に対する反応時間がそれぞれの統制条件に対するそれに比べて有意に長いことを明らかにした上で、ガーデンパス量を従属変数、反応抑制課題におけるパフォーマンスや作動記憶容量などを独立変数とする重回帰分析を実施した。その結果、ストループ課題におけるパフォーマンスによってのみガーデンパス量を予測することができることが明らかになった。このことから、(i)文処理過程において意味解釈を修正する必要が生じた際には一般的認知機能である(すなわち、言語処理に特化していない機能である)抑制機能が利用されていること、(ii)これまでに文処理能力の個人差を説明するにあたって重要視されてきた作動記憶容量の個人差よりも抑制機能の個人差の方が予測力が高いこと、(iii)非言語的反応抑制課題を実行している際のパフォーマンスではガーデンパス量を予測できなかったことから、抑制すべき刺激の性質によって抑制機能の働き方が異なってくることなどが明らかになった。これらの研究成果は、2010年3月中旬に開催される、CUNY conference on human sentence processingにて発表することが決定している。
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Research Products
(1 results)