2009 Fiscal Year Annual Research Report
経済のグローバル化がコモンズに与える影響に関する研究
Project/Area Number |
09J06494
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
嶋田 大作 Doshisha University, 経済学部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 国際研究者交流 / カナダ:ノルウェー:スウェーデン:フィンランド / 万人権 / 開放型コモンズ / 閉鎖型コモンズ / エコロジー経済学 / 自由貿易 / 自然資源管理 |
Research Abstract |
先進工業国においては、多くのコモンズが、経済のグローバル化の影響を強く受けて、自然資源の管理・利用を放棄する等の形で衰退してきた。他方で、コモンズへのグローバル化の負の影響を緩和してきた事例や、新たな形で自然資源の共同利用を維持、あるいは、創出しようとする取り組みが存在する。本研究では、複数事例の比較研究により、経済のグローバル化がコモンズに与える影響を明らかにすることを目的としている。 国際的な比較研究にあたり、本研究では、閉鎖型コモンズと開放型コモンズという概念を導入した。閉鎖型コモンズとは、地縁を基にした集団が、厳格なメンバーシップとルールの下に、自然資源を高度かつ持続的に利用する制度のことを指し、日本の入会林野、漁場、ため池等のコモンズがこれに該当する。他方、開放型コモンズとは、厳格なメンバーシップやルールを持たず、自然資源のストックに影響を与えない形で、万人が利用する制度のことを指し、北欧の万人権がこれにあたる。 閉鎖型コモンズは、自然資源を直接的に利用する仕組みであるため、安価な自然資源を海外から大量に輸入することを可能とする自由貿易の影響を受けやすいことが分かった。また、こうした自由貿易の影響を分析する上で、エコロジー経済学の自由貿易理論が有用であることが分かった。他方、開放型コモンズは、レクリエーション等の自然資源の間接的利用が主となるため、自由貿易の影響を受けにくく、北欧の事例研究により、現在の先進工業国でも衰退することなく存続していることが分かった。また、万人権は、北欧の伝統的な慣習による固有のものと理解されていたが、土地の所有形態に関わらず、自然への万人のアクセスが認められているカナダオンタリオ州のブルース・トレイルの事例研究からは、そうした慣習を持たない地域でも、新たに、開放型コモンズが創出されるプロセスが明らかになりつつある。
|