2009 Fiscal Year Annual Research Report
ゼブラフィッシュ側線神経系をモデルとした神経回路形成機構の解析
Project/Area Number |
09J06524
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 朗 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 神経回路形成 / 側線 / ライブイメージング |
Research Abstract |
神経系が正常に機能するためには、個々の細胞が独自の接続を形成し、複雑な神経回路を形成することが必要である。しかし、視覚系や嗅覚系など脊椎動物の多くのモデル系においては、細胞数の多さ・回路の複雑さといった要因のため、細胞レベルで神経回路形成を解析することが困難であった。本研究では解析に適した側線神経系を新たなモデル系として用いて、神経回路形成時の個々の神経細胞の振る舞いを詳細に観測した。その結果、一見均一な細胞集団である側線神経だが、個々の神経細胞はそれぞれ異なる伸長速度・形態を示すことが明らかになった。特に、集団内でも先行して軸索を伸ばす神経細胞のグループ(タイプA)と後続の神経細胞グループ(タイプB)とでは、伸長速度・成長円錐の形態に大きな違いが見られた。さらに、形成される神経回路にもタイプA・B間で違いがあった。タイプAの神経細胞はどれも特定の領域に接続する傾向があったのに対し、タイプBの神経細胞はその「細胞体の位置」が「接続する標的器官の位置」に反映されており、トポグラフィックマップと呼ばれる多くの神経系に共通して見られる回路を形成していた。以上の結果から、神経細胞集団は回路形成の過程においてすでに大きな多様性を有しており、その多様な特徴(今回の場合は伸長速度や形態など)と最終的に形成される回路との間に関連があることが明らかになった。このように、回路形成過程における個々の細胞の振る舞いと回路の関係を、系全体にわたって解析した研究例はほとんどない。解析に適するという側線神経系の特徴を活かした本研究の成果は、脊椎動物の神経回路形成を理解する上で重要な知見の一つであると言える。
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Research Products
(1 results)