2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06551
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
糸崎 真一郎 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 数理物理 / 量子力学 / シュレディンガー方程式 / 散乱理論 / 波動作用素 / 古典力学 / ハミルトン・ヤコビ方程式 / 散乱多様体 |
Research Abstract |
シュレディンガー方程式の散乱問題について,関数解析,フーリエ変換,偏微分方程式などの手法を用いて研究を行った.特に,遠方で漸近的に多項式増大するような多様体上で時間に依存する散乱理論を展開し,波動作用素の存在および漸近完全性を示し,散乱作用素が定義可能であることを示した. シュレディンガー方程式とは,電子の運動を表現する偏微分方程式であり,量子力学において中心的な役割を果たしている.中でも散乱問題は,実験による検証が可能であるため,量子力学におけるもっとも重要な問題の一つとして研究されてきた.ある種の曲がった空間上でシュレディンガー方程式を考えることができ,時間に依存する散乱問題が展開できることが近年分かってきていた. 本研究では,遠方で漸近的に多項式増大するような多様体上のシュレディンガー方程式において長距離型のポテンシャルが摂動項として存在する場合について次の結果を得た.すなわち,ムール評価を示すことで極限吸収原理と呼はれるレゾルベント評価を得,これを用いて放射評価を示した.こうして得られた二種類の評価を用いて,摂動項が短距離型の場合について,自己共役作用素に関する加藤の滑らかな摂動理論(Kato's smooth perturbation theory)を用いて,波動作用素の存在およひ漸近完全性を示した. 本研究では.ユークリッド空間の場合に知られていた放射評価をある種の多様体上のラプラシアンに対しても得たところに特徴がある.放射評価を用いることで,摂動が長距離型の場の波動作用素の存在および完全性や,時間大局的なストリッカーズ評価などが示されることが期待される.
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Research Products
(4 results)