2009 Fiscal Year Annual Research Report
スピン液体状態を利用したマルチフェロイクスに代わる電気磁気効果の研究
Project/Area Number |
09J06590
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
林 勇太 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | スピン液体 / フラストレーション / 電気磁気効果 |
Research Abstract |
我々がこれまで研究対象としてきた有機物質に対し最近行われた第一原理計算により、我々のモデルパラメータも変更を迫られた。これを受け、三角格子における異方性パラメータを(正三角格子に対し一次元側から正方格子側へ)拡張し、RVB平均場解析(RVBMF)および変分モンテカルロ法(VMC)による再計算を行った。その結果、一次元側で見られた「一次元化」と同様、正方格子側でもフラストレーションを解消するべく相互作用が実効的に正方格子型にくりこまれる「正方格子化」が見られることが分かった。さらに、そのパラメータ領域でも正三角格子近傍ではギャップ関数が僅かな虚部を持ち、励起スペクトルに小さなギャップが開く可能性があることを示した。この状態は、実際に有機物質で見られる有限温度の物理量(スピン格子緩和率、比熱など)の温度依存性は説明できないが、ギャップの大きさは観測された微小ギャップの大きさと矛盾しない。低温で見られる金属的な温度依存性は、考察していない不純物の影響と考えられる。 この結果は、スピンカイラリティの観点では正三角格子近傍(一次元側異方性、正方格子側異方性の双方)で電気磁気効果による誘電分極が生じ得ることを示唆している。我々は、これまでの三角格子スピン系の理論では扱われて来なかった、異方性を取り入れた複素ギャップ関数を持つRVB(スピン液体)状態を用いることで、このような時間反転対称性の破れた特異な状態を見出すことができた。
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Research Products
(4 results)