2009 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン点欠陥における強相関・強結合量子状態の理論研究
Project/Area Number |
09J06594
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
山川 洋一 Niigata University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シリコン / 原子空孔 / 強相関電子系 / 非断熱効果 |
Research Abstract |
近年、極低温での超音波測定により、高純度シリコン単結晶が、僅かに含まれる原子空孔により異常なソフト化を示すという実験結果が報告され、極低温での局所量子状態の基礎物理と、半導体基盤のシリコンウェハーにおける最先端欠陥観測技術への応用の両面から注目されている。このソフト化の物理を解明する為、微視的描像からのアプローチとして、先行理論を拡張した原子空孔のクラスターモデルを導入し、厳密対角化法を用いて電子相関・電子フォノン相互作用の効果を調べた。その結果、電気的に中性な電荷状態V0の基底状態は、電子相関効果でスピン1重項・軌道2重項になるが、電子フォノン相互作用によってスピン3重項・軌道3重項へ、さらに強結合領域ではスピン1重項・軌道3重項へと変化する事を明らかにした。また、これまで常識とされていたNegative Effective-U Systemは軌道内クーロン相互作用のみで説明可能である事、電子とTrigonalモードフォノン相互作用によって解消し電気的に+1価のV+状態が現れる事を明らかにした。これらの結果は、先行研究の結果と対照的な反面、超音波実験の結果を良く説明し、極低温における強相関・強結合効果の重要性を表している。さらに、巨視的描像からのアプローチとして、シリコンの第一原理計算の結果を再現する強束縛模型を構築し、そこに原子空孔ポテンシャルを導入して完全結晶中に一個の原子空孔に対するGreen関数を求めた。極微小且つ極微量な原子空孔がマクロな超音波測定で観測される為には、大きな四極子感受率が必要である。得られたGreen関数から原子空孔準位の電荷状態及び多極子感受率の空間分布を調べた結果、電子密度の2割程度が5Åから20Åという非常に広範囲に分布しており、この広がりの効果によって四極子を含めた高次の多極子感受率が異常に増大している事を明らかにした。
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Research Products
(30 results)