2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06605
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
伊藤 朋子 Waseda University, 教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 確率推論課題 / 推論様式 / 認知発達 / コンピテンス要因 / パフォーマンス要因 / 知的操作 / ベイズ型推論課題 / 確率量化操作 |
Research Abstract |
コンピテンス要因(確率推論課題の解決に不可欠な課題解決者の知的操作(確率量化操作))とパフォーマンス要因(知的操作の働きに影響を及ぼすと考えられる課題解決者の既有知識や課題の親近性,課題内容など)を区別する立場から,ベイズの定理を用いて推論するベイズ型推論課題(P(H|D)を問う確率推論課題)における推論様式を認知発達的に分析する研究を行った。 具体的には,以下の内容を明らかにした。基準率無視を含む様々な誤判断と正判断の出現メカニズム,および,形式的な課題と主題化された課題に出現する推論様式の関係は,課題解決者の確率量化操作の獲得水準という観点で説明できる可能性があること,課題の表記法は,課題の成績に影響を及ぼすパフォーマンス要因の一つであると考えられたが,異なる表記法を用いて出題したベイズ型推論課題の結果から,ベイズ型推論課題の難しさの要因は,パフォーマンス要因にあるというよりも,コンピテンス要因の問題にあると考えられること,問われているP(H|D)の解釈がP(D|H)まで浮動するかどうか(基準率無視の出現)は,事象Hと事象Dの関連性(課題内容)に依存すると考えられること,子どもであってもベイズ型推論課題が解けるという先行研究の主張には,確率量化操作の水準という観点に立つと疑問の余地があること,などが明らかになった。これまでの確率推論研究は,大人を対象に行ったものが多く,子どもを対象とした研究は少なかったように思われるが,認知発達的観点から確率推論課題における推論様式を分析した当該年度の研究は,課題に出現する最も初歩的な誤判断から最も高次の正判断に至るまでの多様な推論様式を,確率量化操作の水準という単一の基準で説明できる可能性を示した点で,意義および重要性をもっているのではないかと考えられる。
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Research Products
(7 results)