2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06616
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
松田 佳希 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 統計物理学 / スピングラス / 最適化問題 / 量子アニーリング |
Research Abstract |
今年度は、最適化問題に対し量子アニーリングを用いた際に現われうる困難性について詳細に調べ上げ、研究論文として発表、及び学会において口頭発表を行った。 スピングラス模型に代表される統計物理におけるランダムネスを伴うスピンモデルの基底状態を探索する問題は、難しい最適化問題の一種と見なすことができるために、最適化問題におけるコスト関数と、統計物理学におけるスピングラス模型のエネルギー構造との関連がこれまでの研究により指摘されてきた。スピングラス模型においては、スピングラス相と呼ばれる乱れた凍結相が低温において存在し、これが従来の熱アニーリング手法において最適解を求める際の障害となる。量子アニーリングにおいても同様の問題が起こると考えられており、このスピングラス相の存在や性質は、統計物理学上の問題としても、量子アニーリングの実用化を目指す研究としても大変興味深い研究対象である。 本研究ではスピングラス模型を最適化問題の例として取り上げ、次のような視点から研究を行った。1.温度軸および量子化軸に対するスピングラス相の存在範囲の決定、2.スピングラス相転移とその物理的性質。結果として、量子アニーリングを行う際、多くのモデルにおいて量子性の減少によってスピングラス相転移が起こることが明らかとなった。一般に、相転移・臨界現象が起ると量子アニーリングが失敗する可能性があり、これが量子アニーリングの困難性であると考えられてきた。そのうえ、スピングラス相転移においては相内部においても特異性を持つ可能性が本研究において示唆され、これは相転移現象が転移点だけでなく、相内部において常に起き続けていることを意味する。これらの事実は量子アニーリングを実用化する際の大きな障害になり得るため、今後の研究ではこの困難性を回避するような経路を用いたアニーリングを提案し、実用性を追究したい。
|
Research Products
(9 results)