2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06616
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 佳希 東京大学, 物性研究所, 助教
|
Keywords | 統計物理学 / スピングラス / 最適化問題 / 量子アニーリング |
Research Abstract |
今年度も引き続き、最適化問題に対し量子アニーリングを用いた際に現われうる困難性についてランダム系の統計物理学による視点から解析を行い、研究論文として発表、及び学会において口頭発表を行った。 ランダムスピン系特有の低温相として知られるスピングラス相と、難しい最適化問題に対しアニーリング法を用いて探索した場合の問題点における関連性がこれまで指摘されてきた。これは、模型の同一性、すなわち難しい最適化問題の典型例は物理学におけるランダムスピン模型で書き下すことが出来る事から示唆される。 本研究では、新たなアニーリング手法である量子アニーリング法を最適化問題(スピングラス問題)に適用し、さらに対象を量子系に拡張することで低温相(量子スピングラス相)がどの様な物理的性質を持ち、アニーリングを実行した際の問題が生じるかを明らかにした。研究の特徴である対象の量子化には次のような意義がある。1.温度軸および量子化軸に対する相図や、量子性の導入のスピングラス相への影響は解析的研究が殆ど成されていない2.相図が明らかとなれば、相図平面上でスピングラス相転移を回避するといった比較的自由度の高いアニーリングパスを実現できる。結果として、量子スピングラス模型に対する低温相の性質を明らかにする解析的手法を提案し、それにより数値計算を行うことで相図を精度良く決定することに成功した。また、相図には現れない非平衡状態としての動的性質についても明らかにした。後者は特に最適化問題に対しての量子アニーリング法にとって大変重要である。動的性質が明らかとなる事で、量子アニーリング法を用いた際に量子相転移の回避を狙う最適なアニーリングパスを具体的に提案することが可能となる。このことは量子アニーリング法の今後のさらなる発展に対し大きな貢献になると考えられる。
|
Research Products
(2 results)