2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本列島における縄文海進像の再構築による生態系変化と人間活動に関する環境史研究
Project/Area Number |
09J06641
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
一木 絵理 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 縄文海進 / 海退 / 環境史 |
Research Abstract |
日本列島における縄文海進像を再構築し、縄文海進・海退の様相とそれに伴う生態系変化と人間活動を明らかにするために、重要となる地域を取り上げ、比較研究を進めた。 取り上げた地域は、(1)奥東京湾(関東平野)、(2)古本荘湾(秋田県)、(3)古青谷湾(鳥取県)、(4)古椿海(千葉県)の4地点であり、他に2遺跡に関して調査報告を行った。 まず(1)奥東京湾の最奥まで海域が広がった時期を明らかにするため、寺西第2貝塚(群馬県)の資料を見学、再検討を行い、放射性炭素年代測定を加えた。これより、奥東京湾最奥部に位置する縄文時代早期後半の貝塚に暦年代を始めて加えることができ、環境史の軸で捉えることが可能となった。 (2)では、秋田県由利本荘市の菖蒲崎貝塚において、発掘調査の見学、および貝塚周辺で採取されたボーリングコアの観察・分析を行った。海進・海退および貝塚形成の変遷を詳細に読み取ることができた。これらのボーリングコアおよび菖蒲崎貝塚、周辺遺跡群から古本荘湾の復元が可能となった。 (3)鳥取県青谷町の青谷上寺地遺跡の景観復元プロジェクトにおいては、現地発掘調査の見学や試料採取・分析、およびボーリングコアの観察・分析を行った。特にボーリングコアの海成層に含まれる軟体動物遺体(特に貝化石)を扱い、縄文海進から海退への海域環境の変遷を明らかにした。 (4)房総半島の太平洋に面した古椿海の海域生態系の復元と海退プロセス、および植生変遷を、軟体動物群・珪藻化石・花粉化石・年代測定の共同研究によって総合化することが可能となった。その結果を日本植生史学会においてポスター発表を行った。 他に埼玉県ふじみ野市の上福岡貝塚において整理作業および報告書作成を行った。出土した貝類遺体の組成を明らかにし、貝塚の形成を読み取ることが出来た。また、東京都文京区の後楽二丁目南遺跡の報告書作成を行い、江戸時代前期のゴミ堆積物を調査、分析し、その内容を明らかにした。 また、重要な遺跡を取り巻く遺跡群全体を把握し、遺跡立地や分布、時間軸を整理してきた。このような比較研究を進めることで、それぞれの地域の地形や堆積環境の違い、海進期の内湾形態の違いによって、海域生態系が多様に変化することを明らかにした。
|