2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09J06697
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西山 陽大 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 相対論的原子核衝突 / 量子非平衡過程 / 数値計算 / 熱平衡化 / Kadanoff-Baym |
Research Abstract |
近年、Relativistic Heavy Ion Collider(RHIC)では、原子核同士の高エネルギー衝突実験によって、クォーク・グルオンプラズマ(QGP)の研究が行われている。現在のところ、QGP生成後の完全流体模型による研究が成功を収めているが、生成前の熱平衡化に至る非平衡過程(古典論的には再現できない早期熱化)がまだよく理解されていない。そこで、我々はグルオン場の量子論的非平衡過程を記述できるKadanoff-Baym(KB)方程式によるアプローチを考えた。本研究では、量子非平衡過程という観点からQGP生成過程を調査することを目的としている。 研究では、まず、グルオン場を扱う前に中間子の有効理論であるスカラーφ4、及びO(N)模型について研究を行った。そこでは、相対論的KB方程式に基づくエントロピーを導入し、対称性の破れていない場合のφ4理論の弱結合領域において、時空間の変化の緩やかな場合に量子論的過程がエントロピーを生成させることを解析的に証明した。(Nucl.Phys.Aに投稿し受理される。)さらに、O(N)模型の強結合領域(1/N展開を使用)に対し、量子論的過程が同じくエントロピーを生成させることを証明した。また実際に、空間1次元の系に対し、KB方程式の数値計算で、エントロピー生成および最終的な熱平衡化を確かめた。空間1次元の系での熱平衡化は、古典論的には起こらず、量子論特有の現象である。 最後に、我々はグルオンの従うゲージ理論に対する研究に着手した。古典場が存在しない系について、特定のゲージにおいてKB方程式とそれに基づくエントロピーを書き下し、弱結合領域の量子論的過程に対してエントロピーが生成されることを示すことができた。これは、量子論的過程特有のものであり、古典論的には実現しない。これらの量子論的効果が、QGP生成過程でも重要な役割を演じている可能性がある。さらに、実際に空間2次元時間1次元の系で、上に述べた特定のゲージでのエントロピー生成が実際に起こることを数値計算で確かめた。しかしながら、非平衡状態におけるエントロピーのゲージ共変性の問題がまだ残っている。
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Research Products
(5 results)